一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達 昌人
今回は、広告文案の規制について触れてみたいと思います。
私たちのほとんどは、広告作成に関連した仕事をしています。その際、問題になるのが、広告文案の表現です。不動産から食品類まで広告規制がありますが、特に医療・医薬品の広告文案については規制が厳しく、頭を悩ませることが多いものです。
病院の広告作りの機会は少ないかもしれませんが、厚生労働省の「医療広告ガイドライン」(平成25年9月27日改正)が基準になります。広告と見なされる媒体は、チラシ,DM、パンフレット、ポスター、看板類から新聞・雑誌広告、放送、インターネット上のバナーまでさまざまですが、院内で配布するパンフレットなどは含まれません。
ガイドラインの「禁止されている広告」としては、虚偽広告(「絶対安全な手術」など医学的にありえないこと)、比較広告(「日本一」「最高」など根拠のないもの)、誇大広告(不当に誇張したり、誤認させる表現)、その他、客観的事実が証明できないもの、公序良俗に反する内容の広告などですが、けだし当然のことと言えるでしょう。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師(整骨院)、カイロプラクティック、整体院などの広告表現にも法規制があり、ちょっとした不注意で法律違反にならないよう慎重な取り組みが大切です。
関連の法律としては、「医師法」「あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師等に関する法律(通称:あはき法)」「柔道整復師における広告の制限」などが絡んで来ます。健康食品や健康器具・医療器具を取り扱う場合には、「医薬品、医療機器品等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(かつての「薬事法」が平成26年11月25日に名称変更、略称:医薬品医療機器品等法、通称:薬機法)」や景品表示法が関連してきます。
ところで、この業種について簡単に説明すると、あん摩マッサージ指圧師、はり師から整体院までが行うサービスは「医業類似行為」であり、先の病院の「医業」ではありません。少しややこししいですが、「医業」とは医師の行う「医療行為」で、人の傷病の医療・診断または予防のために医学に基づく行為に対して、「医業類似行為」は疾病の治療または保健の目的をもって光熱器具などを使用、また四肢もしくは精神作用を利用して施術する行為で、医師の専門知識・技能を必要としないものとされます(厚生労働省)。
さらに「医業類似行為」には、「法で認められた医業類似行為」と「法に基づかない医業類似行為」の2種類があります。「法で認められた医業類似行為」は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師などで、「あはき法」の規則により養成学校で学び、国家試験に合格した資格が必要です。「法に基づかない医業類似行為」には、カイロプラクティック、整体、骨盤矯正、気功、温熱・電気・光線などによる療法で、「あはき法」で認められたもの以外が入り、まとめて「療術」と言われます。
つまり、無免許でも「人の健康を害する恐れがない」こと要件として営業が許可されますが、当然「安全施術」が第一の基本となってきます。
そこで広告文案ですが、人体の健康に関わることから、「医療広告ガイドライン」にほぼ準じた規制になってきます。すなわち、虚偽広告、比較広告、誇大広告は厳禁です。
例えば「最新の施術・設備」などは、根拠のない比較広告です。「痛くない施術を行います」は不適確ですが、「痛くない施術を目指します」という方針はOKです。しかし「痛くない施術を目指します(99%以上の満足度)」となると、当然、不適確となります。施術のビフォアとアフターを訴えるのは、施術の効果表現とみられて、不可です。
はり、きゅう、接骨院で、〇○クリニックとするのは診療所と紛らわしいので不可。カイロプラクティック、整体院などでは「治療」「治す」の言葉は使えません。「癒す」「和らげる」程度ならOKです。施術費用は情報なので、分かりやすく太字にしたり、下線を引くことは認められていますが、前面に強調して品位を落とす表現は不適確となります。従業者の写真を載せることはOKですが、氏名、年齢、性別、役職、経歴などを明記します。
さて、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、健康食品など、ドラッグストア・薬店で取り扱う商品については、先の厚生労働省の「医薬品医療機器品等法(薬機法)」に基づき、広告が虚偽・誇大にならないよう適性を図るために、厚生労働省医薬食品局から各都道府県知事に通達した「医薬品等適正広告基準」が参考になります。
その中の「医薬品医療機器品等法に関わる不適表示・広告事例集」を見ると、誰もが、これでは広告文案が作れないな、とお手上げの状態になってくるでしょう。
その一例を挙げてみると、医薬品のパンフレットなどに「だるい、カルシウム不足、肩こり、腰痛のある人、血圧が心配な人に」などは使えません。承認されている表現は「滋養強壮」「虚弱体質」などです。
医薬部外品では、DMなどに「白髪を防ぐエキス発見、黒髪が白髪になるのを予防します」は不適格。白髪予防の効果は認められていないため。
化粧品では、雑誌広告に「肌のリフト力に弾みを付けます」「お肌のシミ、くすみなどに有効」などは不適格。化粧品に対して認められている効能効果の範囲を超えているためです。POP広告に「敏感肌の方など、赤ちゃんからお年寄りまで安心してお使いいただけます」は不適格。安全性を保証する表現はできないため。
医療機器では雑誌広告などに「痛みの緩和、万病の予防をします。危険性はありません」は不適格。承認された効果効能を逸脱していることと、安全性に関わる保証表現は使用できないためです。
健康食品では、インターネット広告などに「内臓脂肪を燃やす」「血液をサラサラにする効果があります」は不適格。身体の組織機能の強化、促進を目的とした表現は、医薬品的な効果効能に該当するため広告できないため、などなど。
私たちが、医療・医薬品関連のPOP広告やパンフレットを作成する際には、よく注意して、法律に触れない文案作成を図ることが肝心です。ここでは一部を紹介しましたが、詳しくは、厚生労働省等の上記の法律、その他の業界取り決めの規定をネットでご参照下さい。