一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達 昌人
東京・池袋の「自由学園明日館(みょうにちかん)」を、5月5日に見学しました。自由学園は羽仁吉一・もと子夫妻により、大正10年(1921年)に女学校として創立されたものです。
設計は、米建築家の巨匠フランク・ロイド・ライトによるもの。当時、帝国ホテル設計のために来日していたライトに、校舎の設計を依頼。ライトは羽仁夫妻の教育理念に共感して快諾し「簡素な外形の中にすぐれた思いを充たしたい」という希みを基調に設計したと言われます。その後、学年や学生が増えて、自由学園は東京・東久留米市に移転しましたが、夫妻が日本の教育の明日を託して命名した「明日館」は、卒業生の諸活動の場として使われてきました。
幸いに関東大震災や太平洋戦争の空襲の被害を逃れましたが、80年の歳月の中で老朽化が進んだために、保存修理工事・増築工事がなされています。その後、明日館の歴史的、芸術的価値が評価され、平成9年(1997年)に国の重要文化財指定を受けています。
東京には、小笠原伯爵邸ほか多くの貴族や著名実業家の洋風館邸宅が見られますが、明日館はそうした豪奢とは一線を画する建築物です。
木造で漆喰塗りの建物は、中央棟を中心に、左右に伸びた東・西教室をシンメトリーに配し、ライトの第一期黄金時代の作風とされるもの。高さを抑えた地を這うような形式は、プレイリースタイル(草原スタイル)と呼ばれ、ライトの出身地ウイスコンシンの大草原から着想を得たものとのことです。また、空間を連続させて一体構造とする設計は、枠組壁式構法(2×4構法)の先駆けとの見方もあります。
建物の特長は、内部空間の幾何学的な装飾と、外光を巧みに取り込む幾何学的な窓の配置。ライト自身がデザインしたという照明は当時からのもの。教室や食堂の椅子の座席は、背もたれの板を2枚つなぎ合わせたもので、費用節減のため。館内には、夫妻の創刊した「家庭乃友(後・婦人乃友)」の展示室もあります。
当日は、喫茶付き見学日。館員によるガイドツアーもあり、講堂ではクインテットによるコンサートも催され、文化堪能の充実した休日となりました。
・シンメトリーな外観
・ホールの幾何学模様の大窓
・ライトデザインのライト
・3枚の板による椅子
・幾何学的な構成の、食堂のインテリア
・館員のガイドツアー