令和元年(2019年)8月8日
一般社団法人日本POPサミット協会
安達 昌人
最近、「クラウドファンディング」という言葉をよく目にします。この「クラウド」は、パソコン上の「雲・cloud」ではなく、「群衆・crowd」のことです。
すなわち「クラウドファンディング」とは、「群衆・crowd」と「資金調達・funding」を組み合わせた造語で、インターネットのサイトでやりたいことを発表し、賛同してくれた不特定多数の人から、少額ずつ広く資金を調達するシステムです。
資金調達といえば、一般には金融機関からの借り入れや、関係者による出資などがありますが、クラウドファンディングはそれとは違う「手軽さ」「拡散性の高さ」「テストマーケティングの有用性」といった点で、魅力的で新たな資金調達の仕組みとして注目されているものです。
クラウドファンディングは2000年代に米国で盛んになり、日本での始まりは、2011年の東日本大震災が契機となったとされます。少額から気軽に支援できること、支援したお金がどんなふうに使われるかが分かることなどが、被災地の復興支援に必要な資金集めに、大きく貢献したことは事実です。
実は、不特定多数の人から資金を募るクラウドファンディングの考え方や手法は、日本では昔からあったようで、例えば鎌倉時代初期に、焼き討ちで焼失した奈良東大寺と仏像の修復・再建のために、僧たちが全国各地を回り、信者や有志から少額の寄付を集め、再興事業に寄与しました。この風習は他の寺院に普及し、庶民から寄付を募る「勧進(かんじん)」となります。これが今や、WEB上の活動となったものです。
今日では、「ふるさと納税」もクラウドファンディングの一つです。地方自治体が解決したい課題を具体的にプロジェクト化し、それに共感した人からふるさと納税によって寄付を募るというのが、本来の仕組みです。例えばその一つのクラウドファンディング事業者「CAMPFIRE」が提供している「CAMPFIREふるさと納税」は、好きな地域を応援するという想いを実現するサービスです。「小さな火を灯し続ける」というCAMPFIREのポリシーで、ふるさと納税の制度を活用して、自治体とともに新しい資金の流れの形を作っています。
他にも、ふるさと納税サイトの「ふるさとチョイス」や「さとふる」などの事業者が、それぞれの特性を活かしたサービスを提供しています。
さて、クラウドファンディングは「こんなモノやサービスを作り出したい」「こうした問題を解決したい」などといった想いを持つ「起案者」と、「応援したい」「モノやサービスを試してみたい」という「支援者」、そしてその活動を進める「事業者」で構成されます。
事業者としては、先の「CAMPFIRE」や「Readyfor」「Makuake」など、サービス事業も多岐にわたり、新規参入も増加しています。
報道関係では、朝日新聞社も「A-port」という事業サイトを立ち上げていて、メディアを活かした発信力で人気を高めています。
次に、クラウドファンディングには、資金や支援者へのリターン(特典)のあり方で、現時点では5つのタイプがあります。「寄付型」「株式型(投資型)」「融資型」「購入型」「ファンド型」そして先の「ふるさと納税型」です。
●寄付型=集めた資金は全額を寄付に当て、リターンはなし。礼状や写真を受け取ることはある。被災地の支援など社会貢献のプロジェクトが多い。
●株式型=個人の起案者ではなく、企業が行う資金調達の一つで、個人出資者がプロジェクトの利益から、配当という形でリターンを受け取る。
●融資型=出資者が利子という形で、一定のリターンを受け取る。「ソーシャルレンディング」として認知されている。金融商品の一つとなるため、事業者は「貸金業法」「金融商品取引法」などの法的規制を受ける。
●購入型=支援者はお返しとして、モノやサービス、権利という形での特典を受ける。金銭的な見返りは無い。「All or Nothing型(=募集期間内に目標金額を達成した場合のみプロジェクトが成立)」(「All In型(=目標金額に達していなくても、一人でも支援者がいれば認められる)」といった2種類のやり方があり、起案者はどちらかが選べる。
●ファンド型=株式型と同じく、企業が行う資金調達の一つ。特定の事業に対して個人投資家から資金を募る仕組み。投資家は売上等の成果や出資額に応じて、金銭的なリターンを受け取ることが出来る。
上記の一つの「購入型」を図にしてみると、下のようになります。

クラウドファンディングのメリット・デメリットとしては、起案者の場合、メリットは従来の手段では資金調達が難しかったものが、調達可能性が広がったこと。デメリットは、実施方法によって、目標金額に達成できず、資金調達できない可能性があること。資金集めで万が一、プロジェクトが頓挫すれば、自身が責任を負うことになります。
支援者のメリットとしては、公開前に審査を受けているために透明性のある仕組みのプロジェクトであり、起案者のプロジェクトページや活動報告、SNSの発信を見ることで、一般的な通販サービスよりも、作り手の顔が見られる双方向のコミュニケーションにつながること。デメリットとしては、予期せぬ出来事でリターンが届かないこともあります。CAMPFIREでは「クラウドファンディング保険」というサービスを提供しています。
といった状況で、クラウドファンディング市場は急速に拡大しています。世界銀行の推定によると、2019年には6兆9千億円に達すると見られ、取引額の成長率は年間17.1%増で、2022までに総額11兆円を超えると予想されています。
国内のクラウドファンディング市場は、矢野経済研究所の調査によれば、2017年度の市場規模は1,700憶円とされ、前年比227.4%増、2018年度は120%増の2,044億円と見込まれています。
実を言えば、私の住む地域は昔ながらの和菓子の製造会社が多く、その一つの「五家宝」などのきなこ菓子の製造・販売会社が、若い客層を対象に、チョコ入りのきなこスイーツの新製品を開発・新発売したことをきっかけに、クラウドファンディングを開始しています。
事業者は先に紹介した朝日新聞社の「A-port」です。「A-port」は「購入型」「寄付型」のみのサイトですが、「購入型」を活用してその指導のもとにプロジェクトを立ち上げて作業を進行し、自社のホームページでアピールしています。開始したばかりでまだ支援者も少なく、目標金額は低調。今のところ、テストマーケティングが主な狙いですが、しかし、従来は地域の顧客が主体であったものを、今後はWEB上で資金提供を広く呼びかけるとともに、大型展示会にも積極的に出店するなど活発化して、全国に自社製品の展開を図る計画です。

協会会員の皆さんも、自分の関連する得意先に、あるいは自分で商品開発を図る際に、その販売促進の一環として、クラウドファンディングを組み込むことを計画してはいかがでしょうか。以上、提案情報といたします。