令和3年(2021年)1月2日
一般社団法人日本POPサミット協会会長
安達昌人
明けましておめでとうございます。
会員の皆様には、つつがなく新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
一般社団法人日本POPサミット協会は、昨年8月1日をもって第10期を迎えました。
ただし、前期では、今日の状況により、協会としての本来の活動事業が方針通りに実施できなかったことを、誠に残念に、また申し訳なく感じております。
昨年はこれまでに例を見ない、世界が一変した一年でした。あらゆる地域、業界、人々の暮らしに甚大な被害が及びました。「コロナ禍」という言葉が使われますが、「禍」の字は「(人為的な)わざわい」の意味で、「災」の字が示す「(天災の)わざわい」とは異なるようです。コロナが世界中に蔓延したのは、天災というよりも人為的な理由が大きいとされています。
では、新年はどうなるのか。また、どうすべきか。これは従来の新年所感に見るように、前進的な抱負や希望的観測を、安易には語れない様相です。
昨年、東京都知事が言及したことにより、よく知れ渡った言葉に「ウイズコロナ」があります。英語では「Coexist with COVID-19」の略語で、「新型ウイルスとの共存・共生」という意味です。つまり、今回のコロナ禍を簡単に撲滅できるものとは考えず、今後もコロナ禍、あるいは別のパンデミックに繰り返し見舞われることを想定し、以前の社会に完全に戻すことは不可能という認識を前提にして、新たな戦略や生活様式を作り直すことが不可欠である、という考え方です。国や企業は、新型コロナウイルスの感染拡大を警戒しながら、経済活動を進行させようと、さまざまな方策で臨みすが、その厳しい状況は報道に見られる通りです。
「ウイズコロナ」とともに「アフターコロナ」「ポストコロナ」という言葉も使われます。「アフターコロナ」とは、ワクチンや治療法が確立し、新型コロナウイルスを恐れる必要がなくなる段階の期間を指し、「ポストコロナ」は、コロナ禍以降に暮らしの質が大きく変容した状況の社会を言うようです(参照=「ポストコロナ時代こそ、成熟社会にかじを切れ」〈京都大学・広井良典教授,NHK:特設サイト〉など)。
しかし現状では、先の遠い途上の過程にあり、気を抜いて行動することは危険で、「ポストコロナ」を目指すためにも、まずは自粛・自衛の方式を厳守して生きることが重要であることは言うまでもありません。
ただ、新たな戦略の一つとして「テレワーク」の普及は、皆様もご承知のとおりです。
実は、テレワーク(在宅勤務=情報通信技術を使って、働く場所と時間を自由に選択するシステム)は20年以上前に提唱され、世界では北欧や米国などで普及していて、日本特有の働き方の風習から導入が遅れていたようです。それがコロナ禍によって、にわかにクローズアップされ、活用されることになりました。今やどこでも、オンラインによる情報伝達が活発化。しかし、テレワークが日本でしだいに定着していくとともに、この柔軟な働き方により、仕事の環境や方式にさらに新しい知恵が生まれることが期待されるところです。
さて、今年の干支は「丑(牛)」です。「丑」という字の成り立ちは、手の指を曲げて物を握る様子を表した象形文字で、つかむ、からむ、の意味があり、糸へんに丑と書く「紐」にその意が伝っています。曲がる、ねじる、の意味も持ち、芽が種子の内部で伸びきらない状態を表していると言われます。
そして、十二支は植物が循環する様子を表し、二番目の丑は、子年に蒔いた種が芽を出して成長する時期とされています。そこで丑年には、先を急がず目前のことを着実に進めることが、種の中の芽を成長させ、将来の成功につながっていくと言われます。
ところで、話の規模が大きくなりますが、現在、世界が、そして日本が取り組んでいる大きな目標課題が「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」です。「持続可能な開発目標」と訳されています。周知のように、SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。
人類は今や、感染症ばかりでなく、貧困、紛争、気候変動など、これまでになかった数多くの課題に直面しています。この危機感から、人類がこの地球で安定して暮らし続けて行くために、世界中のさまざまな立場の人たちが話し合い、課題を整理し、解決法を考え、具体的な目標が立てられたのがSDGsです。
SDGsは17の大きな目標と、それらを達成するための169のターゲットで構成されています。17の目標の中には、1番目の貧困の問題に始まり、健康政策、教育振興、安全環境、エネルギーとクリーン、働きがいと経済成長、産業と技術革新、まちづくりなどと続き、そして17番目のパートナーシップで目標達成まで、重要課題が含まれています。
日本でも、国際保健の推進、難民問題、女性の輝く社会の実現、などでSDGsに貢献しています。また、企業にあっても、CSR(企業の社会的責任)の一環として、SDGsに積極的に取り組む例が増えているようです。例えば、ガラスメーカーのHARIOでは、製品づくりにあって環境配慮素材へのアプローチなどを、企業方針として社員の認知を図り、ワークショップの企画・実施などがその例です。《SDGsについては別に詳しく紹介します。》
ここで言えることは、SDGsの「持続可能」とは、目標に向かって何かをし続けられる、ということであり、長い目で未来を目指しているということです。
先の「丑(牛)」に戻りますと、牛にまつわることわざに「牛の歩みも千里」があります。努力を怠らなければ目指すものがつかめ、成果が上がることのたとえです。
では、努力とは何かと言えば、私たちPOP広告クリエイターにとっては、やはり新しい分野に挑むクリエイティブ活動の持続です。フランスに「卵を割らなければオムレツは出来ない」ということわざがありますが、常にきっかけとなる行動を起こす努力が肝心です。
ただし、短慮性急ではなく、じっくりと腰を据えて、確実に進展していきたいものです。
今後は、協会もさらにいっそうの発展を目指し、新しい年を迎えて着実に歩んで行きたいと願いますので、どうぞ会員皆様のご賛同とご協力をよろしくお願い申し上げる次第です。