令和3年(20221年)6月30日
一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達 昌人
皆さん、こんにちは! 先日は「POP広告クリエイター」についてのオンラインセミナーを実施しましたが、お役に立つ情報源となったでしょうか。オンラインは、地域的に広い私たちの協会にとっては、まさに好適なコミュニケーション媒体だと考えます。今後も機会を見て、勉強会等にぜひ活用していきたいものです。
さて、今回は「移動販売車」について、書いてみたいと思います。皆さんの地域では、移動販売車は巡回してきますか? 実は今、国内では相当数の移動販売車が活動しています。
その昔は、「たこ焼き」「ラーメン」の軽食を車両で販売する業者を見かけましたが、路上占有規制の強化や、臭気・排水に対する近隣住民の苦情などが原因で、許可された地域以外で営業する業者は減少しました。
ところが、2000年代に入って、地方山村部での少子高齢化・人口流出の過疎化が深刻化し、加えて過疎地域の小売店の廃業、交通の不便により、いわゆる「買い物難民(好きな言葉ではありませんが)」が増加するとともに、「移動販売車」が見直されることになりました。
東日本大震災(2011年3月)の際に、大手コンビニが、生活必要商品を揃えた移動販売車を運行したことも、強く記憶に残るところです。
「移動スーパー」としてよく知られている例が「とくし丸」(本社・徳島市)です。同社の「とくし丸通信」(2020年3月)によれは、創業(2012年)から丸8年で、全国の移動スーパーの実質稼働台数が500台を超えたことを伝えています。
「移動スーパーとくし丸」は、個人事業主が販売パートナーとなって車両を所有し、全国の地方スーパーと提携して、その取り扱う生鮮食品・生活雑貨の移動販売を行うもので、冷蔵庫付き軽トラックに約400品目以上、約1200~1500点を積み、週2回家庭の玄関先まで出向いて対面販売する(店頭価格にプラスする10円はガソリン代)、といったシステムです。買い物支援にとどまらず、地域の「見守り隊」の役割も評価されています。
ちなみに、「とくし丸」の提携スーパーは2020年3月時点で、全国123社、合計店舗数2000店を超え、単月のシステム流通総額が10億円を突破したとの発表です。
「移動スーパー」は、他に、地元スーパー、個人商店、生活協同組合、大手コンビニチェーンが参入しています。ただし、すべての「移動販売」が順調な業績というわけではなく、地域や移動販売車によって厳しい状況も見られるようです。
一方、「買い物弱者(経産省の表現)」数は、全国で約700万人(経産省調査2016年)とされていますが、農水省では全65歳以上人口の24.6%、825万人が買い物難民としています(農林省プレスリリース2015年)。
さらに、買い物困難の人は、今や地方山村部ばかりでなく、都市部でも増加しています。
私の暮らす東京都足立区は、大田区、世田谷区に次ぐ第3位で、総人口68万3千257人、そして高齢者数はその4分の1の16万9千人。中心部から外れた区内の共同住宅や一軒家には、空き室・空き家が目立ち、地方の過疎地域とほとんど変わらない状況です。先の「とくし丸」は現在、都内で17台とされますが、その1台が足立区内で活動しています。
ところで、足立区内の商店街の一つの「六町商店会(別称・レスク)」が、本年3月から移動販売車「GOGOレスク号」をスタートさせました。⑴買い物をする店舗が少ない地域の買い物支援、⑵商店会内の飲食店支援、⑶地域活性化、の思いから実施したもの。
東京都の「政策課題対応商店街事業」の「買物支援対策助成金」を活用して、1.5トンの軽トラックを購入。この移動販売車はキッチンカーになっていて、社内で調理をして温かい弁当を提供することが可能です。ちなみに、都の「買物支援対策助成金」は、車両の購入費用の2分の1、あるいは上限150万円となっています。
同商店会によれば「八百屋がない地域に行く時は野菜を積み込んだり、訪れる場所や要望によって取り扱う商品を変えるようにしている」とのこと。売れ残れば、商店に戻す方式。販売場所や日時を調整して、決まった時点で同商店会のホームページやフェイスブックで知らせています。先日、写真を撮らせてもらいました。
区内の東端に位置する六町商店会は、古くからこの地に住む住民と、「つくばエクスプレス」の六町駅が出来てから新しく住み始めた住民との接点を作り、日常での声掛けに始まり、災害時の助け合いが生まれるようにと、2014年に立ち上げたまだ新しい商店会です。
同商店会はこれまでに、子供たちをサポートするために町内の飲食店に呼びかけ、子ども食堂の一環として、指定の飲食店で「六町100円食堂」を開いて来ましたが、コロナ禍の後では、テイクアウトで食事を提供する100円弁当「キッズランチ」に切り替え、9店舗の協力のもと各10食ずつを販売、すぐに完売するほどの人気です。
そして、今年の3月に新たな活動としたのが「移動マルシェ」です。商店会では「いつか東京の住みたい街ランキング10位以内に入りたい」という夢を持っての活動です。
さて、日本では、移動販売の手法は江戸時代以前より存在し、村々を回った行商の歴史があります。3年前に旅行した時にはもう見かけませんでしたが、、尾道市では「晩寄り」と言って、年配女性が手押し車の小さいスペースに新鮮な瀬戸内海の魚介を載せて売る姿が、街の風物詩となっていました。私の育った北陸の越前地方にも漁村からの行商が見られました。
都内では、早稲田商店会・大熊通り商店会が「わせくまデリ」に取り組んでいます。早稲田在住の学生が、Uber Eatsのように飲食店の料理を配達し、学生が受ける配達料は300円。
今後、個店で、商店街で、企業で、移動販売車のいっそうの増加が予想されるしだいです。