令和3年(2021年)8月15日
一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達昌人
皆さん、こんにちは!
猛暑の後に記録的大雨の日々、会員の皆さん方には、いかがお過ごしでしょうか。
コロナ感染拡大の方は、新種のコロナ変異株の蔓延のためか、あるいは警戒心の緩みか、一向に収まらない状況です。いつ終息するかは予測できないでしょう。
こうした状況にあって、東京都知事の発言が話題になりました。小池知事といえば、環境大臣時代に「クール・ビズ」を掲げて注目されましたが、これは環境省の一般公募によって決められたものらしい。その後の知事の発言は、カタカナ語の連発で、各方面から不評を買っているようです。
コロナの状況の外出抑制について「ステイホーム(おうちにいましょう)」などは、自分たちは外人か、と憤懣の声も出たとのこと。「今が、オーバーシュートが発生するか否かの大変重要な分かれ道」の「オーバーシュート」は、「爆発的な感染者急増」の意味。その他、「東京アラート(警告)」「ウイズコロナ(コロナとともに)」などいろいろ。
特に、「エッセンシャルワーカー以外は、東京に出てこないでいただきたい」との発言の「エッセンシャルワーカー」は、ほとんどの人に意味不明。英和辞典で調べると、「必要不可欠な労働者(essential worker)」のことで、医療・福祉や保育、運輸・物流、小売業、公共機関などが該当し、社会基盤を支える仕事に従事する人たちとされています。
何故、カタカナ語を連発するかと言えば、注目度を高めてメッセージを印象付け、警告を強化する狙いだろうと推測されています。さらに海外に留学していた習慣からとも。
もっとも私は、小池知事は特有の感性を持ち、文案づくりの巧者だと考えています。
例えば、昨年11月の緊急記者会見で、都民の忘年会を控えた会食について「5つの小」を提唱。「少人数で、小一時間、小声で、小皿で、小まめに、こころづかい」として、高齢者の会食は控えるようにと促しました。ところが、会見当日の夜に、高齢者の財界人5人と会食して、その言行不一致に批判を浴びています。
本年6月4日の定例会見では「8時だョ!みんな帰ろう」の標語が話題になりました。
カエルが描かれたフリップボードには「・午後8時にはみんなかえる ・職場からかえる ・お店からかえる ・寄り道せずかえる ・ウチで気分をかえる」とカエルシリーズを表示。ただし、非常事態宣言下で、ドリフターズ(志村けんも亡くなった)のパロディは軽率で怪しからぬと、各方面から反撃されました。さすがに最近は自重の様子です。
さて、現状にあって、最も不遇な立場にあるのが飲食店で、廃業の憂き目にあっている店舗も多いようです。
しかし、その中にあって、さまざまに工夫を凝らしている例も見られます。
今やオンラインセミナーを観る機会が増えましたが、玉石混合のセミナー中にあって、最近、興味を引かれたのは、「DXで変わる飲食店経営~コロナ禍を生き抜く収益拡大の仕組みづくり~」(日本経済新聞社主催・日経メッセリテールテックJapan《8月6日無料公開》)です。皆さんの中には、観られた方がいるかもしれません。
7人ばかりの論者が登場しましたが、実際に店舗経営に携わる2人の方の発表に聞き応えがありました。ここに紹介してみます。
その一人は、京都市の「佰食屋(ひゃくしょくや)」の若い女性経営者です。同店は1日100食限定で国産牛ステーキ丼を提供する飲食店で、11時~14時半営業。行列が絶えない人気店でしたが、感染拡大の影響は免れず、4店舗のうち、繁華街にあって集客が落ち込んだ2店舗(テナント料も高額)を早い時期に閉鎖。現在は京都・西院の本店と、すぐ近くの四条大宮の「佰食屋1/2(1日50食)」の2店で営業中(HPで公開)。
店名通り、100食限定なので、必要な分の材料だけを地元の食材店で仕入れて、閉店後は何も残らずフードロスはゼロ。冷凍庫は無し。「100食しかない」「ランチのみ」「コスパが最高」という希少価値が集客効果を高めています。ステーキ丼は国産牛120gを使っていて、一般の飲食店の原価率がほぼ30%に比べて、同店は50%なので他の店舗は真似ができません。
本年4月、京都市に緊急事態宣言が実施される直前に、いち早くテイクアウト営業のみに切り替え、メニューもステーキ丼とハンバーグの単品に絞っています。電話予約のみで電話が鳴りやまない状況。。テイクアウトなので洗い物などが無く、通常営業では100食に従業員5人の態勢が3人になり(50食の店は2人で対応)生産性が向上しています。
今後の方向としては、例えば居酒屋チェーンにランチやデリバリーとして参入して全国展開を図るとか、阪神淡路大震災の際に自力で脱出した経験から、人を救うのは筋力だとのポリシーで「防災筋力」の意匠登録を出願。高タンパク商品の開発と筋力トレーニングをサポートする仕組みや制度の導入など、意気軒高の夢を持っているようです。
今一人は、「東京からあげ専門店・あげたて」(全国177店・現時点)の男性経営者。
現在はデリバリー専門で、本部がオーダーを取り、加盟店(居酒屋や飲食店など)が唐揚げを作り、配達業者が注文主に届けて、それぞれが利益を分配するシステムです。
デリバリー・テイクアウトは今や飲食店の主たる活動で、その成果はまちまちですが、「あげたて」は業界№1を誇っています(詳しくはHPを参照)。
この企業の優れている点は、「顧客を知る」という方針。実店舗と違ってデリバリーは相手が分からない、食べる人を知らなくてモノは作れないと、配達品にQRコードなどを入れた独自のアンケートでリサーチ。調査の結果、唐揚げの注文客の48%は20歳~30歳の女性一人客と判明。これまで、ガッツリ食べる若い男性を狙ってきたメインターゲットを、女性20代一人使用、見た目重視の揚げたて品質、というニーズに合わせて業態を設定、価格もアップ。あらゆるネット広告を利用して、集客を果たしています。
今後は、さらなる工夫を凝らすさまざまな対応が出現するものと、期待しています。