令和3年(2021年)12月17日
一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達昌人
皆さん、こんにちは! にわかに寒さ厳しい日々となりましたが、お元気にご活動のことと推察いたします。現状ではCOVID-19も身を縮め、息をひそめている様子です。
さて、「POP&マーケティング用語集」について、皆さんの意向を伺ったときに、会員の丸山浩美さんのメールに、「無農薬」という言葉は使えないというような項目も取り上げると良いとありました。貴重なご意見です。
確かに「無農薬」「減農薬」は今や禁止された用語です。しかし現在も、通販の商品や、スーパーの青果売り場のPOP広告などで見かけます。そこで今回は、農産物の禁止用語について触れてみたいと思います。
「無農薬」「減農薬」については、農林水産省のホームページの「特別栽培農産表示ガイドライン(平成19年4月改定)」の中で、「消費者が一切の残留農薬等を含まないとの間違ったイメージを抱きやすく、優良誤認を招くため、表示禁止事項です。」とし、さらに「『減農薬』『減化学肥料』表示は、削減の比較基準、割合及び対象(残留農薬なのか使用回数なのか)が不明確であり、消費者にとって分かりにくい表示なので、表示禁止事項です。」と明記しています。
では、売り場の商品の表記はどうか、またPOP広告の状況はどうか。近くのスーパーの青果売り場を見てみると、
(1)何も書かれていない農産物(農薬や化学肥料を使った一般的な栽培=慣行栽培農産物)
(2)有機栽培農産物(農薬や化学肥料を使わない栽培)
(3)特別栽培農産物(どちらにも属さない栽培)
の3種類の表示が見られます。実際に法律や表示ガイドラインでは、日本の農産物はこの3種類に分けられます。つまり、日本の農産物に表記してよいのは、「有機栽培農産物」と「特別栽培農産物」ということになります。
「有機栽培農産物」は、スーパーでたまに見かける「有機JASマーク」のシールが貼られた青果物類です。「有機栽培(有機農業)」の定義は「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと、並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」(「有機農業の推進に関する法律」平成18年法律第12号)とされます。
「有機JASマーク」は、有機農産物の日本農林規格(JAS規格)に従った栽培方法で生産が行われていることを第三者機関(登録認証機関)が検査して、使用が認められます。有機JASマークの使用が認められていない事業者は、農作物に「有機」「オーガニック」といった名称を使うことは法律で禁止されています。
「特別栽培農産物」とは、世間的にほとんど認知されていない表示で、「有機栽培農産物」とどう違うのかと、戸惑う人が少なくないようです。
先のガイドラインでは、原則として「農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学合成された農薬及び肥料の使用を低減することを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、 農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培方法を採用して生産すること」と定められています。
そして、生産する時に、
①節減対象農薬を使用の際、その地域の同時期に慣行的に行われている回数の50%以下、
②化学肥料の窒素成分量が栽培地の属する地域の50%以下で栽培された農産物とされます。「節減対象農薬」には除草剤・殺虫剤・殺菌剤・土壌消毒剤なども含まれます。また、比較基準となる化学肥料の通常使用料の値は、各地方公共機関が品目ごとに策定したものとなります。
少しややこしくて分かり難いのですが、要するに「有機栽培」は化学農薬・化学肥料を使用しないことが原則で、「特別栽培」の場合は、化学農薬・化学肥料を減らすことが目的となっています。
「特別栽培農産物」を理解しやすいのは、ふだん食べているお米の「特別栽培米」で、節減対象農薬や化学肥料を慣行レベルの5割以下で育てたお米です。
米袋の表に「特別栽培米」を訴えている例もあり、現在は、裏には「農林水産省新ガイドラインによる表示」として「特別栽培米」の表示と、例えば「節減対象農薬:栽培期間中不使用(あるいは『○○地域比〇割減』)」(化学肥料も同じ表示)、続いて栽培責任者名や所在地、連絡先などが明記されています。
お米の写真は「伝説の日野米」のタイトルの下に「鳥取県認証「日野」特別栽培米」と表示し、「特別農産物」の認証シールが貼られています。
鳥取県の大山(だいせん)山麓の「こしひかり」で、通常栽培より農薬を5割、化学肥料を9割削減としていて、第13回環境保全型農業推進コンクールで優秀賞を受賞しています。
皆さんも健康安全を留意してお米を買う方は、裏面の農水産省指定の表示で確認されると良いでしょう。
広告等の禁止用語には、この他に「不当景品類及び不当表示防止法(「景品表示法」「景表法」とも)や、「薬機法(旧・薬事法)」、また「景品表示法」では「不動産のおとり広告に関する表示」など、業界の細かい禁止事項も定められています。
POP広告作成にあっては、注意すべき不当表示が数多くて、キャッチコピーその他の広告文案づくりには苦労しますが、広告の禁止用語については、また次回に取り上げることにしましょう。
以上