令和5年(2023年)6月15日
一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達 昌人
季節の移り変わりが足早ですが、皆さん方には、お元気にご活動のことと推察します。
さて、スポーツのビッグイベントの話題としては、今年の3月22日に「2023 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」で、侍ジャパンが決勝戦でアメリカを下して優勝し、喜びのニュースは長期間に及びました。大谷翔平ブームは今もいっそう盛んです。
昨年の11月~12月には、「FIFAワールドカップ2022」がサッカーファンを熱狂させました。日本は対コスタリカ戦で敗退しましたが、その時、森保一監督が選手たちにかけた励ましの言葉の一節が、注目されました。
「過去は変えられないが、未来は変えられる」、つまり先を目指して奮起しようというもの。
この言葉は、正確には「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる(You cannot change others or the past. You can change yourself and the future.)」 といった文言の引用で、カナダの精神科医エリック・バーン(Eric Berne)の名言とされるものです。⦅エリック・バーン著「人生脚本のすべて」(星和書店)⦆
他人とは、相手に対して変わるためのキッカケを作ったり、背中を押してあげることは出来るが、最終的にはその本人がどう判断し、どう行動するかという問題で、だから、他人を変えることは出来ない。
自分が変わるのは、すべて自分自身の問題なので、意識的に自分を変えることができる。未来も同様に、自分自身の努力しだいで変えることが出来るというものです。
というわけで、自分が今のまま何もしなかった場合は、何もしなかった未来が訪れ、何か大きな変化を起こした場合は、未来も変わるということになります。
以上が、エリック・バーンの言わんとしている、誰にでも納得できる理論です。
しかし、自分を変えるということは、実際には、それほど簡単ではないでしょう。
そのヒントの一つは、まず「今いる環境をガラッと変えると、自分を変えられることができる」というもの。環境を変えれば、新しい課題にぶつかる、出会う人も変わる、そして新たな発見が生まれて、新たな考え方が出来る。そうすると、新たな行動を起こせ、行動が変わっていけば、新たな結果が生まれる、ということです。なぁ~だ、と思われるような、しごく当たり前のヒントです。
大切なのは自分自身が変わることを決意して、環境を変え「新しいことをする」。つまり、知らないことに挑戦することの重要さを説いていると言えます。
とは言え、会員の皆さんには、すでにもう、いろいろと新しいことに挑戦されているのではないでしょうか。環境をガッラと変えるかどうかはともかく、例えばIT関連の新しい技法を学んだり、身近な園芸に取り組んだり、楽器をマスターすべく教室に通ったりと、それなりに「自分磨き」をされていると思います。
私事で恐縮ですが、今の自分にもう未来はないことを心得てはいるものの、やはり自分を変えるべき、というささやかな願望で、最近、「英会話セット」をネット購入してパソコンに取り入れました。今さら英会話と言ったところですが、実は「英語」の教職員免許証を持っていながら、ヒヤリングは苦手。アメリカに旅行した時、帰る頃にようやく、現地の人達の話を少し聞き取ることが出来た程度です。
訪日する欧米の人達と話して、その地の事情を知りたいと思います。そして、可能ならば、オーストラリアに旅行してみたいとも願います。
何故、オーストラリアなのか。「SDGs報告書2022版」(毎年6月に発表)の達成度ランキングで、オーストラリアは6位とかなり高いためです。オーストラリアは、達成項目の中で「14:海の生物多様性」「15:陸の生物多様性」の面で、優位にあるようです(ちなみに達成度で1位~3位は、北欧のフィンランド、スウエーデン、デンマーク。一方、日本は19位と低いランク)。生存多様性に優れ、比較的訪れやすいオーストラリアの自然環境に触れてみたいものです。
今一つは、「エシカル消費」を自分の新しい課題に出来ないか、ということです。
皆さんは「エシカル消費」のことをご存じですか?
「エシカル(Ethical)」は「倫理的な」という意味で、気候変動や人権損害などの社会問題を考えながら、モノを買ったりすることです。
気候変動については、例えば、2022年にパキスタンで発生した大洪水により、国の3分の1が水没し、1700人以上が亡くなっているように、世界の気象災害は過去50年間で5倍に増加していると言われます。
国連気候変動に関する政府間パネル(JPCC)は、「人間活動が地球を温暖化させてきたことは、疑う余地がない」としています。
生物多様性も危機的状況です。環境NGOのWWF(世界自然保護基金)は、1970年と比べると、生物多様性は約70%も減少していると報告しています。
人権面での課題も重大です。世界の子どもの10人に1人が児童労働に従事していて、カカオやコットンなどの生産で、かなりの過剰な児童労働が行われているようです。私たちに身近なチョコレートや衣服は、子供たちの労働に支えられているのかもしれません。《以上は「エシカル白書2022~2023」より》
こうした課題に対して、消費者が出来ることは、人権、社会、地球環境に配慮した商品やサービスを選ぶこと、すなわち、目の前の商品がどのように作られ、自分は何を選んでどう使うか、モノの過去・現在・未来を考えての選択が「エシカル消費」とされます。
ただし、「エシカル消費」は幅広い分野にわたるため、何から始めればよいかは難しいところ。身近なものとして「認証ラベル・マーク」は、その基準の一つとされます。
途上国の人権に配慮した「国際フェアトレード認証」や、水産資源と環境に配慮した漁業で獲られた証しであるMSC「海のエコラベル」、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らない「有機JASマーク」、社会・経済・環境(持続可能性の3つの柱)の強化につながる手法で生産された「レインフォレスト・アライアンス認証」、正しく管理された森林から生産された林産物の使用に関わる「FSC認証」、オーガニックコットンの世界基準により日本で製造されたことを示す「JOCA会員ラベル」などがそれに当たります。
認証ラベル・マークのいろいろ
国際フェアトレード認識ラベル
MSC海のエコラベル
有機JASマーク
レインフォレスト・アライアンス認証
FSC認証
JOCA日本会員ラベル
さらに、エシカルな暮らしのルールとして「7R」も提唱されています(一般社団法人エシカル協会資料より)。すでに、おなじみの言葉も多いと思います。
●Rethink=今必要か、買う前に立ち止まって考える
●Refuse=ポリ袋など、不用のものを断る
●Reduce=使うものを減らす
●Repair=修理して長く使う
●Reuse=再使用・再利用する
●Repurpose=別のものとして再生する
●Recycle=再資源化する
私たちはこれまで、POP広告を指導したり作成する際に、消費者のベネフィットを重点としていますが、いずれにせよ、商品の購買を促すツールとして取り組んできました。
しかし、今日の状況にあって、それだけで良いのか。
モノを買う消費者にさらに賢明になってもらい、エシカルな感覚で品選びをしてもらうことが大切です。「買物は投票」という言葉がありますが、消費は商品を作り出す企業に対する意思表示とも言われます。賢い消費者が求めていることを知れば、企業もよりエシカルな商品・サービスを提供することになるでしょう。
今や日本では、デジタルな手法も含めて、経済の活発化が進められています。その状況にあって、販売促進とは違う観点に立つ「エシカル消費」の理念を、POP広告でどう表現するかは、実に難しい課題です。皆さんも、一緒に考えていただけませんか。
以上、今回は「自分を変える」と「新しいことへの取り組み」の2点について述べてみました。皆さん方のいっそうのご活躍を期待いたします。