「言葉」は時代によって変化するもの、そして、その時代を反映するものと言われます。日進月歩の今日の状況にあっては、最新の技術や施策が次々と生まれ、それに伴って、新しい言葉も増えていきます。特にデジタル化の進むビジネスシーンはもとより、日常の業務あっても、数多くのマーケティング専門用語、カタカナ語、英語略語がふんだんに使われている現状を目にします。ただし、実は正確には分からない、説明できないという言葉も少なくないようです。
そこで、POP広告に関わる人たちから、流通業に携わる多くの人たちが必要とする用語を検索する時に、すぐに役立つ用語集となるよう、POP広告用語を主軸として、関連する基本的な経営用語から、最新のITビジネス用語まで取り上げて構成しました。ぜひ、有効にご活用ください。
POP&マーケティング用語集は、下記の5つのカテゴリに分類して意味を表記しています。それぞれのカテゴリーは「あいうえお順」「ABC順」に用語を列挙しています。用語の中の知りたい単語をクリックすると該当する行の見出しに飛ぶので、そこから知りたい用語までスクロールしてください。
例)知りたい用語「キャッチコピー」
POPカテゴリ-「POP&広告関連」の用語から「キャッチコピー」をクリック。
【か】の見出しに飛ぶので、そこから下にスクロールして「キャッチコピー」を探してください。
●サプライチェーン ●サンプリングプロモーション ●シズル効果 ●シナジー効果 ●スタンプ事業 ●ストアロイヤリティ ●セールスプロモーション ●セールスポイント
●チャットボット ●ソーシャルギフト ●ディーラーヘルプス ●データドリブン ●テキストマイニング ●デジタルアイデンティティ ●テストマーケティング ●電子署名
●パーソナルギフト ●パブリシティ ●フォーマルギフト ●プッシュ戦略、プル戦略 ●ブランディング ●プレミアムとノベルティ ●ベネフィット ●ペルソナ ●ベンダー ●ポイントカード
●ライブコマース ●ライフサイクル ●ライフスタイル ●リードタイム ●リテールサポート ●リピート販売 ●六次産業化
アイテム (Item)
品目のことで、集合単品とも言われる。サイズ・色などは違っても、同じ素材、同じデザイン、同じスタイルであれば、同一品目(アイテム)としてまとめられる。アイテムの上位にあたる、商品を性質毎にまとめた種類を「カテゴリー」と言い、アイテムの下位には、さらに細分化して、サイズや色、デザイン別に分けた単位はSKU(Stock Keeping Unit)と呼ばれる。ファッション商品などを管理する場合はSKU単位での商品管理がなされ、日用品やグローサリー商品の場合はアイテム単位による商品管理を最小単位とする考え方が一般的になっている。
アンテナショップ(Antenna Shop)
マーケティングを目的として設置された販売店舗で、「パイロット・ショップ」、「実験店舗」とも呼ばれ、消費者の反応を見るアンテナの役割を果たすことから付けられた呼称である。メーカーや卸売業者などの企業によるアンテナショップでは、消費者の反応やその地域での売れ筋といった消費動向を知るとともに、自社製品や技術をPRする目的がある。方や、地方公共団体や自治体によるアンテナショップでは、地元経済を支える商工業者による、地域資源を活用した地域生産品等を販売、また飲食施設を設置し、観光事業や地域情報の発信により、総合的な地域PRが行なわれる。このようなアンテナショップはPR効果の高い都市の繁華街に出店されることが多い。
一店逸品運動
「一店逸品運動」とは、商店街や共同店舗のそれぞれの店舗が、顧客に自信をもって推奨できる商品を積極的に展開し、自店のイメージアップを図っていく運動である。運動を推進しているのは「全国逸品運動協会/太田巳津彦理事長」で、沿革によれば2004年2月に、第1回全国逸品運動連絡会議(東京)を実施、2007年1月に、特定非営利活動法人(NPO法人)として東京都より認証されていている。
活動事業としては、他の店舗や地域には無い、それぞれの店舗の魅力的な商品の発掘・もしくは新たに開発の、グループミーティンによる「商品研究会」、各店の商品が決まったら「逸品フェア」の開催、地域客をともなって逸品参加店を訪問する「逸品めぐりツアー」などが展開される。こうした意欲的な活動により、現在は、全国各地の商店街、ショッピングセンター、町づくりの活性化に貢献している。「逸品めぐりツアー」では、今まで知られなかった個店の特長などを 地域客が知る機会となり、街の商店街のファン客の増加に有効な役割を果たしている。
移動販売車
2000年代に入って、地方山村部での少子高齢化・人口流出の過疎化が深刻化し、加えて過疎地期の小売店の廃業、交通の不便により、いわゆる「買い物難民」が増加するとともに、「移動販売車」が今日の重大な課題とされている。「移動スーパー」は、今日では地元スーパー、個人商店、生活協同組合、大手コンビニチェーンが参入している。
その中で、知名度が高い例が「とくし丸」(本社・徳島市)で、創業(2012年)から8年後の2020年3月時点では、全国の移動スーパーの実質稼働台数が500台を超えている。提携スーパーはこの時点で、全国123社、合計店舗数2,000点を超え、単月のシステム流通総額が10億円を突破したとの発表がある。「移動スーパーとくし丸」のシステムは、個人事業主が販売パートナーとなって車両を所有し、全国の地方スーパーと提携して、その取り扱う生鮮食品・生活雑貨の移動販売を行うもので、冷蔵庫付き軽トラックに約400品目以上、約1,200~1,500点を積み、週2回家庭の玄関先まで出向いて対面販売、店頭価格に上乗せする10円はガソリン代、等々が知られている。買い物支援にとどまらず、地域の「見守り隊」の役割も評価されている。
一方、「買い物弱者数(経産省では、買い物難民の差別的意味合いを弱めるために使用)」(経産省調査2016年)は、全国で約700万人としているが、農水省では全65歳以上人口の24.6%、825万人が買い物難民としている(農林省プレスリリース2015年)。さらに、買い物困難の人は、今や地方山村部ばかりでなく、都市部でも増加している。例えば、東京都足立区は、大田区、世田谷区に次ぐ第3位の広さの総面積53.25平方km、総人口683,257人、そして高齢者数はその4分の1の16万9千人。中心部から外れた区内の共同住宅や一軒家には、空き室・空き家が目立ち、地方の過疎地域とほとんど変わらない状況と言える。
そうした状況にあって、足立区内の商店街の一つの「六町商店会(別称・レスク)」が、2021年3月から移動販売車「GOGOレスク号」をスタートさせた。(1)買い物をする店舗が少ない地域の買い物支援、(2)商店会内の飲食店支援、(3)地域活性化、の思いから実施したもの。東京都の「政策課題対応商店街事業」の「買物支援対策助成金」を活用して、1.5トンの軽トラックを購入。この移動販売車はキッチンカーになっていて、社内で調理をして温かい弁当を提供することが可能。ちなみに、都の「買物支援対策助成金」は、車両の購入費用の2分の1、あるいは上限150万円となっている。同商店会よれば「八百屋がない地域に行くとき野菜を積み込んだり、訪れる場所や要望によって、取り扱う商品を変えるようにしている」とのこと。売れ残れば、商店に戻す方式。販売場所や日時を調整して、決まった時点で同商店会のホームページやフェイスブックで知らせている。
区内の東端に位置する六町商店会は、古くからこの地に住む住民と、「つくばエクスプレス」の六町駅が出来てから新しく済み始めた住民との接点を作り、日常での声掛けに始まり、災害時の助け合いが生まれるようにと、2014年に立ち上げたまだ新しい商店会。同商店会はこれまでに、子供たちをサポートするために町内の飲食店に呼びかけ、子ども食堂の一環として、指定の飲食店で「六町100円食堂」を開いて来たが、コロナ禍の後では、テイクアウトで食事を提供する100円弁当「キッズランチ」に切り替え、9店舗の協力のもと各10食ずつを販売、すぐに完売するなど人気が高い。また、外出自粛で遠くまで買い物に行けない人たちのために、軒下にテントを立てて、朝採れ新鮮野菜や無農薬野菜などを販売する「つながるマルシェ」を開催している。そして、新たな活動としたのが「移動マルシェ」である。
日本では、移動販売の手法は江戸時代以前より存在し、村々を回った行商の歴史がある。最近は見かけなくなりましたが、尾道市では「晩寄り」と言って、年配女性が手押し車の小さいスペースに新鮮な瀬戸内海の魚介を載せて売る姿が、街の風物詩となっていた。その他、都内では、早稲田商店会・大熊通り商店会が「わせくまデリ」に取り組んでいる。早稲田在住の学生が飲食店の料理を配達し、学生が受ける配達料は300円。今後、個店で、商店街で、企業で、移動販売車のいっそうの増加が予想される。
インサイト(顧客インサイト Insight)
インサイトは、直訳で「洞察」や「物事を見抜く力」などを意味し、顧客インサイトや消費者インサイトともいわれる。また、マーケティングにおけるインサイトは、「人を動かす隠れた心理」を指し、消費者自身も気づいていない無意識の心理のことである。
無意識の心理ということで、「潜在ニーズ」と混同されることがあるが、潜在ニーズは欲求があるのにその対策に気付いていない、あるいは見過ごしている状態を指し、対してインサイトは商品やサービスを利用してみて、あるいは習慣化して初めてわかる感情だったり、当たり前のこととして見過ごしている課題だったり、まだ欲求さえない状態を指している。
企業にとって消費者の必要とする商品やサービスは、「需要(潜在ニーズ)を見つけてつくる」のではなく、いまや「需要からつくり出す」ものになったと言われている。消費者の置かれている状況を理解し、そこから考えられる消費者が必要とする新たな需要をつくり出す効果的なマーケティング戦略の要素がインサイトにあると言われている。
イベント(Event)、キャンペーン(Campaign)
本来は、イベントは「事件・出来事」のこと。「大阪万博(1970年)」の際、「万博はイベントである」という宣言から、「イベント」という言葉が全国に普及し、商店街などでも集客イベントの隆盛を見ることになった。すなわち、イベントとは、一定の決められた場所で、一定期間に企画し、実施する組織と、集客によって参加する人たちが一体になって、共感のうちに催しを盛り上げて行こうというもの。
今は「催事」を総称する言葉として、万博など国家的な催しから見本市などの各種の行事、展覧会、コンサート、売り出しに至るまで幅広く使われている。売りの場におけるイベントを分類すれば、「売り出し催事(セールスイベント)」「文化催事(カルチャラルイベント)」「実演催事(アトラクションイベント)」「景品催事(プレミアムイベント)などとなる。商店街や店舗においては、催事によって主催者のイメージを高め、活気をつくり、購買客の来店頻度を増し、売上増加を図ることが出来、加えてコミュニケーションづくりに有効な手段と言える。一方、キャンペーンは、ある目的を持った運動のことで、マーケティングではイベントが場所を設定した比較的短期間の催しに対し、比較的長期間に全国展開で実施するか活動を指している。
インストアマーチャンダイジング(Instore Merchandising)
店舗の中における売り場管理や、販売促進活動などの方法である。バーゲン・特売などの商品の値引きや、POP広告・陳列方法などで人目を惹く工夫や、実演販売などの店内イベントの実施も含まれる。自店の広告政策による働きかけで来店した顧客の購買意欲を高め、リピーターを獲得したりするためには、売り場のレイアウトを工夫したり、訴求商品得お目立つように展示したり、興味を引くPOP類の掲示物を設置したりするなど、もっとも収益が上がるようにするための活動をいう。
インフルエンサー(Influencer)
SNSで多くのフォロワーを持ち、ネット上で世間に与える影響力が大きい行動を行う人物のことを言う。特定のトピック(ファッション、美容、旅行、子育てなど)に特化した情報を発信している場合が多い。そのような人物の発信する情報を企業が活用して宣伝することをインフルエンサー・マーケティング(SNSマーケティング)と呼んでいる。自社商材の対象ターゲットが情報の参考にしているインフルエンサーに商品PRをしてもらうことで、認知拡大や購買につながるものである。
ウエザーマーチャンダイジング(Weather Merchandising)
天気予報を活かした品揃えのことである。気温を含め、天候に合わせて売れる商品を予測し、仕入れ数の管理を計算するもの。分類として「昇温商品」「降温商品」「晴天型商品」「雨天型商品」「異常気象型商品」などが挙げられる。「昇温商品」はアイスクリームや扇風機など気温が高くなると売れる商品。「降温商品」はおでんやカイロなど気温が下がると売れる商品。「晴天型商品」アウトドアグッズなど晴れた日に売れる商品。「雨天型商品」は傘や除湿剤など。「異常気象型商品」は、台風や大雪などの異常気象時に売れる防災グッズ、即席ラーメンなどの保存食がそれに当たる。
ウォンツ志向とニーズ志向
ニーズ(Needs)とは、「必要」「要求」といった意味を持つ言葉で、人間生活上必要な、ある充足感が奪われている状態のことである。マーケティングにおいては、消費者が実際に求めていることや必要と感じていることを表す。
ウォンツ(Wants)とは、ニーズを満たしてくれるモノが欲しい、という具体的な欲求のことを指し、消費者があるニーズを満たすために特定のモノが欲しくなる状態を表す。
すなわち、ニーズは目的で、ウォンツは手段であると言える。
このような、消費者のニーズやウォンツに沿って商品やサービスを生み出そうとする考え方のことを、『ニーズ志向』『ウォンツ志向』という。
店舗にあっては、地域客のリサーチによりニーズ志向商品を揃えるが、常にフレッシュな売り場づくりを図るためには、顧客のウォンツ志向を開拓していく品揃えも重要である。
売れ筋
同類の商品の中で、特によく売れている商品や、際立って販売数が良い優秀な商品のことを指す。一般的には「ABC分析」のAランク商品に当たる。また、最近は「PI値」(買上率の数値)の高い商品を売れ筋と規定する場合もある。「パレートの法則(2・8の法則)」(イギリスの経済学者ヴィルフレド・パレートによって提唱)では、 顧客全体の2割である優良顧客が売上の8割を挙げているとするが、商品構成にあっても、2割の売れ筋商品で8割の売上を稼ぐといわれている。売れ筋商品は、目立たせ、品切れさせないように陳列量を多く取ることが原則である。対義語は「死に筋」で、流行遅れになった商品や来店者があまり関心を示さず、商品や売上が伸びない商品のこと。「ABC分析」のCランク商品に当たる。「死に筋」が店頭の売り場を占拠している状態では売り上げは上がらない。POSシステムで1日単位や週単位、月単位で商品の販売動向を観察し、売れ筋商品を多く販売するために、死に筋商品の販売スペースを縮小したり、登録商品から外したりすることになる。ただし、死に筋商品でも一定の需要があるため、品揃えを考慮して陳列することも必要で、また、陳列やPOP広告によって、売れ筋に替えていく工夫も大切である。
オピニオンリーダー(Opinion Leader)
ある集団のなかで、その意見が強い影響力をもっている人のことをいう。常識的には、マスコミを通じて社会的に発言する政治家、学者、評論家などの有名人を指し、意見や意志の方向付けに強い影響力を持つ人物のことである。オピニオンリーダーの影響の一例として、テレビで芸能人が特定の商品に対して好意ある発言をし、影響された消費者がその商品を購入する、といったものが挙げられる。店舗にあっても、消費者が商品を選択する際に影響を与える人であればオピニオンリーダーと言える。スーパーマーケット付近にある料理教室の先生、主婦仲間のリーダー的な人などさまざまな存在がある。店舗でも地域のオピニオンリーダーを把握するとともに、育成していく方法も考えられる。
オンラインショップ(Online Shop)
別名でウェブショップ、インターネットショップ、オンラインストア、ウェブストア、電子商店。電子ストアオンラインショップとも呼んでいる。インターネットを介して商品やサービスの売買を行うウェブサイトのことである。例えば、楽天が運営する「楽天市場」や、ヤフーが運営する「Yahoo!ショッピング」、「Amazon」のような大規模なオンラインショップの他、個別の企業が運営するオンラインショップや、個人によるオンラインショップまでさまざまな規模のものがある。商品を購入する場合、住所や名前などの個人情報を入力し、決済に関するすべての手続きをウェブ上で行う。決済方法は、銀行振込みやクレジットカード、代金引換などから選択できる場合が多い。決済手続きが完了すると出店者から商品が送られるが、その間の連絡は主に電子メールで行われる。
買い回り品と最寄り品
顧客がさまざまなブランドやメーカーなど、好みに合った物の品質や価格を比較して、いくつかの店舗を「買い回る」ためこのように呼ばれる。高級な衣類や耐久消費財、装身具・趣味品などなどが挙げられ、購入の頻度が比較的少なくい。これに対して、最寄り品は、食料品や生活雑貨品などといった普段の生活において購入頻度が高く、単価の安い物を指している。
カスタマーエンゲージメント(Customer Engagement)
企業と顧客の間の結びつきや信頼関係を示す言葉である。本来、「エンゲージメント」は約束や契約といった意味を持つ言葉で、日常生活においては結婚の約束である「婚約」を指すこともあり、ビジネスにおいてはマーケティング領域や人事領域などでも使われる言葉である。例えば「従業員エンゲージメント」といえば、従業員が勤める企業に対して抱いている「愛着」や「思い入れ」などのことを指すことになる。これと同しく顧客と企業の間にもエンゲージメントの概念を当てはめたのが「カスタマーエンゲージメント」である。
企業がカスタマーエンゲージメントを重視する必要性は何か、背景となる要素について見てみると、
では、カスタマーエンゲージメントを高めるためには、どのような施策を行うことが向上につながるだろうか。その第一の条件は、顧客についてより深く理解することである。顧客の年齢・性別・住所などといった属性や、Webサイトやアプリ上の行動、購買履歴などのデータをもとに、既存顧客の実態について知っておく必要がある。関係を築いていく相手について知らなければ、どのようなアプローチを取るべきで、どんなメッセージを盛り込むべきか、適切な戦略を立てることはできない。アプローチについては、重要なことは、全顧客に対して一律で同じ情報を届けるのではなく、各顧客が求める情報を、各顧客に最適な方法で届けることである。収集したデータをもとに仮説を立て、顧客がどんな情報を欲しているかを考えて提供していく。
そうした状況にあって、今日では、SNSを活用した戦略が重視されている。SNSは企業と顧客とが直接対話できる空間と言える。例えば、顧客が企業の製品やサービスについてSNS上で不満や要望、質問を書き込んだ際に、すぐに企業のアカウントから返信して対応することで、顧客は面倒な問い合わせを行わずともサポートを受けられたと感じ、それを見ていた周囲の人には「ユーザーの意見を聞いてくれる会社だ」という印象を与えることができる。また、上記のような受動的な対応だけでなく、能動的な情報発信も行われている。情報発信の方法については各社工夫を凝らしており、この会社なら信頼できるという印象をもつ人が増え、結果的にカスタマーエンゲージメントの向上に繋がる場合もある。
企業と顧客との関係性がより良い状態であれば、顧客はその企業の製品やサービスを継続して使い続け、周囲の知人に口コミを広めたり、自身のSNSで自発的に推薦してくれたりと、新規顧客獲得のきっかけを作ってくれることもある。このように、顧客のエンゲージメントを高めることができれば、その顧客は売上の維持や向上に貢献してくれる存在となるものである。
カスタマーサクセス(Customer Success)
「顧客の成功」という意味で、「顧客を成功に導くための取り組み」を指す。どんなに使いやすいサービスも、顧客が期待した成果を達成できなければ、使い続けてもらえない。大切なのは、顧客がそのサービスを使ってどんな成果を上げることを期待しているのかを知り、その成果の実現を手助けすることである。すなわち、顧客がその商品やサービスの価値を最大限に引き出せるよう、アシストすることでもあるといえる。商品やサービスの選択肢が増え、顧客が他社サービスに乗り換えやすくなった今日、「いかにして顧客に使い続けてもらうか」という視点が重要となっている。その視点に欠かせないのが、顧客の本質的なニーズを理解し、そのニーズを実現するのが「カスタマーサクセス」の考え方である。
カスタマージャーニー(Customer Journey)
顧客が商品やサービスを知り、実際に購入し利用するまで、また、利用後に廃棄するまでに、顧客が辿る一連の体験を「旅」に譬えたものである。消費者の価値観は多様化している上、コンタクトポイントの面でも、今や多様な顧客接点が存在している。そして、商品やサービスの認知から購入・消費や、その後の消費者間の情報共有に至るまで、顧客体験は複線化している。このような環境の中で、見込み客を顧客化し、自社(商品・サービス)のファンとなってもらうためには、顧客の辿る「旅」全体を通した顧客体験のマネジメントが不可欠となっている。適切なマーケティング施策を打っていくためには、カスタマージャーニーを地図上の旅のように可視化して捉える、カスタマージャーニーマップの作成が効果高いとされる。
カスタマージャーニーを制作していく過程で、商品開発や広告・宣伝、営業、店頭のスタッフなど、商品と顧客に関わる様々な関係者との議論を通じて認識をすり合わせていくことが求められる。また、こうした議論を通じて顧客理解を深めた結果を、マップとして可視化されることで、社内外の関係者間で認識を共有できるようになり、相互理解や意思疎通を円滑にすることにも寄与する。施策のスムーズな展開が期待できる新しいマーケティング手法とされている。
カスタマーズリレーション(Customer Relations)
企業あるいは販売員と顧客との信頼関係をさす場合と、顧客との信頼向上を図るための活動をさす場合の意味に使われる。すなわち、顧客の購買データを収集し、分析し、顧客の意向に沿ったメッセージを、ダイレクトメールや電話その他の媒体で伝え、顧客との関係を深めていくマーケティング活動である。営業マン個人の場合には、訪問回数やアフターサービス、クレーム処理の際の誠意ある対応などが重要な決め手となる。
クーポン(Coupon)
フランス語で「切ったもの」を表す言葉が語源とされ、商店や商店街、あるいは企業で、通常の価格または料金より何割かを差し引かれることを記載した割引券、また用意した景品と交換できる景品引換券、株主優待券など、特別に有利に扱う優待券の総称である。クーポンを得た顧客は購入する商品を、割引された価格で購入できたり、クーポンと引き換えに商品を受け取ることができる。その商店や企業への親愛感を高め、反復購入を促進し、顧客を優良顧客へと固定させる販売促進ツールとして使用されている。
クライアント(Client)
顧客や依頼人、取引先、顧客といった意味で用いられる。ちなみに「client」の語源は、古代ローマ時代に使われていたラテン語「クリエンティス(貴族の保護を受ける平民)」であるとされる。ビジネスシーンで使われる「クライアント」は依頼人として、特に弁護士や税理士・会計士・建築士などの業界では、業務を依頼してきた企業や個人をクライアントと呼んでいる。依頼人と似たような意味で、取引先という意味にもなり、部品を生産する工場では、発注をかけてきた会社をクライアントと呼ぶことも一般的である。 広告代理店が担当する広告主を、特別の顧客としてクライアントと呼んでいる。
クラウドファンディング(Crowdfunding)
群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、インターネットを通して自分の活動や夢を発信することにより、想いに共感した人や活動を応援したいと思ってくれる人から資金を募る仕組みである。途上国支援や商品開発、自伝本の制作など幅広いプロジェクトが実施されている。クラウドファンディングという言葉自体は新しいが、人々から資金を募り、何かを実現させるという手法自体は古くから存在していて、日本では、寺院や仏像などを造営・修復するため、庶民から寄付を求める「勧進」などがその例と言える。インターネットの普及に伴い、2000年代に米国で先駆的なウェブサイトが続々と開設され市場が拡大してきて、資金集めの方法として一般的なものになっている。日本でも、クラウドファンディングの認知も徐々に広まり、身近なところでも、和菓子店などが新商品開発に実施している例がある。
クレーム(Claim)
もともとは貿易用語であり、貿易取引上の契約における義務を、相手側が実行しなかったり、それによって損害を受けたりした場合に、こちら側の権利を主張したり、損害賠償を請求したりする申立てを言う。販売上は、本来の「クレーム」は、商品・サービスに関して、直接的に損害を受けた場合の請求行為のことであるが、一般的には、消費者側からの苦情全般をさす言葉として使われている。「苦情」とは、何らかのトラブルに不満を感じた顧客がその不満を表す行為と言える。最終的な目的としては、顧客の不満をできるだけ速く察知し、問題の芽を早めに解決していくことが大切である。また、クレームも苦情も、顧客からの具体的な行動であるのに対し、「顧客不満足」というのは、顧客が満足していない状態そのもの。不満足を感じた人のうち、ごく一部の人がクレームなどの具体的行動を起こし、その他の多くの人は不満足を感じながら黙って 他店や他の商品に乗り換えるのが実情とされる。一番危惧すべきは、この"黙って去る"多くの顧客であり、それを食い止めるためにも、氷山の一角である「クレーム」情報を、顧客の声として重視することが肝心である。
景品表示法
正式には、「不当景品類及び不当表示防止法」(昭和37年法律第134号)と言う。正式名称が長いことから、「景品表示法」あるいは「景表法」と省略されている。消費者は誰でも、より良い商品やサービスを求めている。ところが、実際より良く見せかける表示(誇大広告、大げさな表示、虚偽表示、消費者をだますような表示)が行われたり、過大な景品付き販売が行われると、それにつられて実際には品質の良くない商品やサービスを買ってしまい、不利益を被る恐れがある。
具体的には、商品のパッケージのように商品そのものに記載されているもの、チラシやパンフレットのたぐい、ポスターや看板などの商品を広告するもの、新聞や雑誌、インターネットホームページなど、多岐にわたっている。テレビやラジオのトークも対象となり、商品名や料理の名称なども、商品についての表示そのものとされるので、規制対象となっている。
顧客
商取引のお得意様であるが、より厳密にいうと、自社・自店の経営方針、販売姿勢などに共鳴し、常にリピート(継続購入)してくれるお客様のことをいう。
購買心理の8段階
来店客が買い物をする際の心理過程を8段階に分類したもの。販売する側は、顧客が今どのような心理状態にあるかの機会をとらえ、販売に結び付けるチャンスにする。販売員は段階に応じた販売ストーリーを組み立てた対応が求められる。心理過程の8段階は次のようになる。
今日の顧客志向
時代の変転とともに、その風俗、流行などの世相によって、また環境や生活段階、世代の違いなどによって、顧客の志向はさまざまに異なってくる。しかし、人間として誰もが共通する欲求を持っている。そうした観点から、今日の顧客に通じる志向を挙げてみると、以下のようになってくるだろう。ストアはその意向に応える情報を発信したいものである。
コンサルティングセールス(Consulting Sales)
対面販売の際に、商品知識の豊富な販売員が、顧客の商品選択や使用法に関する相談に応じながら、顧客の視点に立って商品情報を伝え、きめ細かく対応する販売方法である。そのために販売員は、専門的な商品知識とともに、顧客目的を的確に把握する能力が強く求められる。例えば、高級紳士服専門店では、紳士服量販店と違って、単にサイズや似合う・似合わないなどで顧客の相談にのるだけでなく、生地や裁断方法の違い、縫製の違いなどスーツについての深い知識を持って説明し、顧客の納得を得て購入に結びつけるといった努力が必要になってくるのである。
コンセプト(Concept)
Conceptの語源は中世ラテン語のconceptum(con-完全に+capereつかむ+-tus過去分詞語尾=完全につかまれたもの)(プログレッシブ英和中辞典(第4版)より)で、「概念」などを意味する。つまり、Concept(概念)とは具体的な移ろいやすい個々の物とは違い「しっかりと把握された普遍性のあるもの」という意味である。
ただし、広告・作品・店舗・料理など「意図のある制作物」を創る際に使われる場合は「ベースとする考え方・構想」のことを指すのが一般的である。
コンテンツマーケティング (Content Marketing)
潜在顧客の疑問や関心に対して、価値ある適切な情報を提供して、見込み客のニーズを育成、関係性を維持し、購買に結びつく行動を促して、最終的にはファンとして定着させることをめざす一連のマーケティング戦略と言える。
何故、コンテンツマーケティングが重視されるようになったかと言えば、企業が当たり前に行っていた、テレビCMのようなマス広告、バナーなどのネッ ト広告、テレアポ型のセールスなど、企業からの一方的な「push型」(商品を買わせたいという狙いが見え見えの)の宣伝手法が通用しなくなっていること、近年のネットの普及で、消費者は知りたい知識や欲しいモノに関する情報を「自分から積極的に探す」ことに習慣化していることなどが挙げられる。実際に「新商品情報の入手経路」はテレビ広告や店頭よりも、SNS・Facebookその他のネット検索が多い現状とされる。
「コンテンツマーケティング」の第一人者とされるジョー・ピユーリッチは「顧客はあなたのことも、あなた(企業・販売者)の製品やサービスのことも気かけていない。彼らが気にするのは、彼等自身の欲求やニーズだけだ」、そして「コンテンツマーケティングとは、顧客が本当に関心を払うことになる、彼らを夢中にする興味深い情報を作り出すことだ」と言っている(「戦略的コンテンツマーケティング」より)。すなわち、まだニーズが顕在化していない「潜在層」のターゲットに対し、価値あるコンテンツを発信することで、自社(自社商品)の存在を認知してもらい、段階的に購買へと展開していくことに重きを置くのが特徴であり、ポイントは「価値あるコンテンツを作る」「顧客を育てる」そして「ファン化する」こととされる。
サプライチェーン(Supply-Chain)
商品が生産されてから消費されるまでの一連の経済活動(調達・生産・物流・販売・消費など)をまとめて表した言葉である。サプライチェーンを日本語に訳すると「サプライ=供給」と「チェーン=連鎖」で、供給先は消費者となる。連鎖とは調達から消費までの流れが鎖のように連なっていることを意味している。サプライチェーンの特徴的な点は、自社だけでなく、協力会社をまたいでモノの流れを捉えることが挙げられる。例えば自社がメーカーの場合、部品メーカーや材料メーカーなどから、部品や原材料を仕入れて製造する。また販売では、配送業者や卸業者、そして小売業者が関係してくる。このように、サプライチェーンでは自社の業務だけでなく、モノが製造されて販売されるまでのフロー全体を捉えるシステムである。
サプライチェーンを管理し、製品の開発や製造、販売を最適化する手法をサプライチェーンマネジメント(SCM)と呼び、部品・材料メーカーや卸売業者、販売店などを含めて在庫情報を共有し、在庫の適正化を図ることが目的とされる。サプライチェーンのタイプは多種多様で、例えば家電の場合は、まず金属、プラスチック、ガラスなどの原材料を調達し、その後メーカー工場で製造して、メーカーや委託先の物流センターに輸送される。さらに家電量販店の物流センターなどを経由して店舗に届けられ、消費者が購入することになる。今や消費者がEC(インターネット通販)での購入も多いが、その場合はEC専用倉庫などに保管され、注文後発送し消費者に届けられる。一方、青果物の場合は、個人農家などの生産者はまずJA(農業協同組合)の拠点に青果を持ち込み、次に卸売市場に輸送され、業者との取引が行われる。取引後は、小売業者や外食業者であれば倉庫・スーパー・飲食店などへ輸送され、消費者に提供され、加工業者であれば工場での加工作業後、卸売業者を通して小売業者や外食業者へ、最終的に消費者に届けられる。近年は、ECを活用することでJAや市場を介さずに生産者から消費者へ直接販売するケースも増えている。
サンプリングプロモーション(Sampling Promotion)
商業施設・公共施設でのイベントや、店頭でのデモンストレーション販売の際に、試供品を提供したり、試食により商品の特徴をアピールするなど、訴求力の高い販売促進活動である。新商品の発表時に試供品が配られることも多いが、コストのかかる販売促進活動であるため、事前に戦略をしっかりと練ることが必要。商品のターゲット層が明確な場合、特定のターゲットにのみサンプリングを行なうことが効率的。新規商品にとって、他商品と差別化を図るのにも有効な手法とされる。
シズル効果(Sizzle)
音や香りなどの五感刺激により、消費者に強力な購買欲求を生じさせる効果を指す。一般大衆の本能的・条件反射的・無意識的反応を利用した販売手法として用いられる。語源は、肉を焼く、フライを揚げる際の擬音のジューッに相当する英語シズル(Sizzle)。そのため食品例で多く示され、テレビCMでもビールを飲む音、調理で炒める音、麺をすする音などの音響効果がよく使用され、シズル効果を利用した広告をシズル広告と呼んでいる。店頭での実演でも、シズル効果を活かして成果を高めることが出来る。
シナジー効果(Synergy)
相乗効果のこと。複数の企業がアライアンス(協働)をすることによって、事業が有利に展開される場合や、一つの企業内の別々の事業部門が協働することで、やはり事業が有利に展開される効果のことを言う。例えば、金融機関が小売店舗内に支店を出す場合、当機関は支店の経費を節約できる上、顧客へのサービス向上、新規顧客の開拓ができる。一方、小売店からすれば、スペースを提供する料金収入のほかに、来客数の増加が見込めるなどの相乗効果が得られるものと言える。
スタンプ事業
スタンプ事業は、大きく「トレードスタンプ」と「ローカルスタンプ」に分類される。「トレードスタンプ」の事業例では「ブルーチップ」「グリーンスタンプ」などがあり、地域の小売業と密着して、販売促進活動を支援している。当初は顧客の買い上げ額に応じてスタンプ(シール)を進呈し、専用台紙に貼り付けてギフトカタログの商品と交換する方式(現在も続行中)で始まったが、現在はポイントカードによるポイント進呈方式が主となっている。また、ポイント事業を核にして、マーケティングリサーチ、リテールコンサルティング、移動スーパーまで、幅広い事業を展開している。
「ローカルスタンプ」は、地域密着型商店街に活用されているシステムで、その基本となっている東京・烏山駅前通り商店街の「ダイヤスタンプ」の例では、カードと台紙貼り付けの2方式で展開している。商店街の加盟店での買物・飲食金額100円につき1P(ポイント)進呈。400Pで500円として買い物に使え、指定金融機関に預金も出来る。イベント(旅行・観劇など)に参加でき、地域の各回数券と交換できる。スタンプを集めて台紙に貼る方式も、高齢者の人に人気がある。
個店にあっても、台紙にスタンプを捺して、割引したり景品と交換する方式は人気があり、販促策として活用している例は多い。理容店などでは土日に来店客が集中していたが、テレワーク時代となり、平日の1日をスタンプ2倍進呈として来客の平均化を図り、成功している例もある。
ストアロイヤリティ(Store Loyalty)
「loyalty」とは、忠実、忠誠といった意味であり、直訳すると「店舗に対する忠誠度」である。すなわち、消費者の店舗に対する親密さや信頼性を指し、店舗が持つ魅力とも言える。
小売店のストアロイヤルティが高まることで、消費者が物品の購入時に同じ店舗を選ぶ傾向が高まる。ストアロイヤルティを向上させるということは小売業においての重要な経営戦略の一つであり、これを高めるために、清潔さ、品揃えや陳列、価格、接客などの工夫が行われている。
セールスプロモーション(Sales Promotion)
日本では「販売促進」と訳され、流通業界にあって、ふだんに使われている。1950年代後半に、マーケティングの一環としてアメリカより輸入された用語とされる。文字通り、売上増進や市場地位向上を目指す活動であり、かつて、AMA=アメリカンマーケティング協会が、以下のように定義している。
「広い意味では、人的販売、広告およびその他の補助的販売のすべてを含むものである。
狭義では、人的販売と広告の間を補足し、それらと協調して、より効果を高めるための一連の販売活動であり、例えば、ディスプレイ、展示会、催事、デモンストレーション、その他の随時の販売努力である。」(1948年第2版より)。AMAの定義は、当初はメーカーを主体とした捉え方である。例えば、マスコミ広告では洗練されたCMが流れても、人的販売(セールス)は営業マンによる地道な活動であり、企業規模が大きくなるほど段差が広がり、意志も疎通になりやすい。その連携を果たす役割として販売促進活動が必要だという考え方である。
その後、AMAの定義は改定され「セールスプロモーションとは、①特有の意味では人的販売、広告、パブリシティを除くマーケティング諸活動のことであり、消費者の購買や販売業者の効率を刺激するための陳列、展示会、催事、デモンストレーション、その他の定例化されていない非反復的な販売努力である。②小売業においては、人的販売、広告、パブリシティを含めて、顧客(消費者)の購入を刺激するすべての方法をいう。」(1960年版の用語定義集)と、より具体的であり、小売業と明確に区別して理解しやすくなっている。なお、用語定義集の中には、次のような特筆すべき個所がある。「販売促進の目指すところは、欲しがっている顧客(顕在需要)に対する販売活動だけでなく、『欲しがりそうな顧客を開発して提供』、『欲しがらせてセールスする(需要の創造)』といったクリエイティブな行為であり、企業の持つ顕在供給力と顧客の潜在需要を積極的に結び付ける意図的な活動である。」今日にも通用する販売促進の目的であり、役割といえる。
では、「小売業のセールスプロモーション」の特徴とは何か。
「店舗を拠点として、商圏内の地域顧客を対象に、適正な商品計画、熱心な訴求と創造性ある提案、さらにふれあい重視のヒューマンリレーションにより、需要開拓を図っていく活動である。」と言える。とはいえ、小売業といっても範囲は広く、百貨店、量販店からコンビニエンスストア、専門店、パパパママストア、今日の業態店とさまざまで販売促進策も多様である。そこに共通している点は、①商圏がある。ただし、今日のEコマースにより、商圏は全国的にと著しく拡大している。②自店が商品を持ち、商品化計画は自在である。③宣伝広告は即戦的で、反応も独行的である。④人的ふれあいに重点がおかれる、などが挙げられる。
小売業の販売促進のコンセプトとしては、①調査=誰が住んでいるかでなく、誰が何を望んでいるか、②統一・調和=確固たる方針で地域との調和、③選択=商品の選択と掘り下げ、④創造=商品開発、提供・演出、⑤祭=催事の活発化、⑥提案=より快適ライフの提案、⑦安全・保障=ケア・マネージメント、などと言える。
さらに、小売業の販売促進は「宣伝」「イベント」主体に考えられがちだが、広い意味で分類すれば、以下のようになってくるだろう。
1.顧客定着化活動 固定客づくり活動 |
①顧客の固定化(名簿管理)と新規客開拓 ②ケア・マネージメント、カストマーズ・リレーション、モニター、友の会、教室 ③ポイントカード、クーポン配布 |
2.商品化計画活動 |
①顧客のニーズを捉えた品揃え ②顧客の新需要開拓の品揃え ③PB商品の開発、一店逸品運動 |
3.店舗イメージアップ活動 |
①店頭、店内構成、イメージポリシー樹立 ②商品展示、陳列によるデモンストレーション ③POP広告、ショーカード、店内装飾作戦 |
4.催事計画活動 |
①催事、売出し方針とスケジュールづくり ②季節別強調商品、サービスの検討 ③メーカー、他業種、商店街とのタイアップ作戦 |
5.宣伝広告活動 |
①経営方針のPR、イメージ広告作戦 ②マスコミ媒体相乗の広告作戦 ③チラシ、DM、ミニツールによる広告作戦 |
6.販売員活動 |
①店頭における顧客応対サービス ②訪問、配達による顧客開拓とサービス ③販売員の接客応対教育 |
*上記の1~3は、顧客をひきつける「守りの販売促進」であり、4~6は、顧客を「攻める販売促進」と言える。
セールスポイント(Sales Point)
和製英語で、精選版日本国語大辞典によると商品を販売するにあたって、特に強調して客の買い気をそそる売り込むべき特徴や長所、美点をいい、セリングポイントともいう、とある。
ちなみに、セールスポイントは就活などでも使われ、「自分の持つ長所や魅力で入社後どう貢献できるかを企業に知ってもらう」ということで、自分の特徴や長所を知ってもらうのとは少々意味合いを異とするようである。
チャットボット(Chatbot)
顧客から企業への問い合わせを、電話やメールではなく、コンピューターネットワーク上で、文字のやり取りでチャット(おしゃべり)を行うのがチャットサポートであり、これを自動返答で行うのがチャットボット。これらのサービスを導入することで、企業と顧客のリアルタイムのやり取りが可能になる。しかも、その内容を文字に残すことができる。チャットサポートやチャットボットは、海外では既に早くからBtoB、BtoCにおけるコミュニケーションのメインツールとして数多くの企業が導入している。こうしたサービスを提供している海外企業の調査では、顧客満足度が向上し、商品の購入数やリピート率も増加、収益も上がるという結果が得られている。しかし、日本企業では一部では活用されているものの、まだまだ普及は進んでいない。導入の壁はどこにあり、どうすればスムーズに導入できるのかが、今後の課題とされている。
ソーシャルギフト(Social Gift)
ソーシャルとは、SNS(Social Networking Serviceソーシャル ネットワーキング サービス)の「ソーシャル Social」のことをいい、「デジタルギフト」「電子ギフト」とも呼ばれる。SNSやメッセンジャー、Eメール機能などオンラインで繋がっている相手に贈り物ができてしまうサービスのことをいう。受取主のアカウントに、電子チケットや電子バーコード、ギフトの通知を送ることで品物を受け取る方法である。忙しい方、オフィスや家にいながらプレゼントを届けたい方などに特に便利なシステムである。
ディーラーヘルプス(Dealer Helps)
メーカー・問屋などが、自社製品を取り扱っている販売店に対し、さまざまな援助やサービスを行うことで、「販売店援助活動」とも呼ばれる。その狙いとしては、販売店の仕入れ意欲・販売意欲を高めること、販売店自身の販売力を強化することなどが挙げられるが、最終的には、販売店とより緊密な関係を築き、自社製品に対する販売協力度を高めることで、自社製品の拡販を図るものである。すなわち、シェア拡大が大きなマーケティング課題と言える市場環境にあっては、自社や自社製品に対する販売店の好意と協力の度合いが大きく影響してくるだけに、ディーラーヘルプス活動は重要である。
販売店に対するディーラーヘルプス活動には、次のようなものがある。
ただし、今日では、かつてのような過剰な資材や販促物の提供などが少なくなり、経営面の支援(リテールサポート)が主になってきている状況にある。
データドリブン(Data Driven)
直訳すると「データ駆動」という言葉であるが、いわゆるKKD(勘、経験、度胸)だけに頼るのではなく売上データやWeb上の解析データなど様々な種類のデータを蓄積し、そのデータを活用した析結果をもとに、収集・分析し、ビジネス上のさまざまな課題に対して判断・意思決定を行うプロセスを指す。データを活用したマーケティングのことを、データドリブンと呼ぶこともある。
業界業種、企業規模問わずグローバル競争の中で企業が生き残っていくためにはDX(デジタル トランス フォーメーション)推進が必要不可欠であると、DXの重要性が叫ばれる中、その中心とも言えるのがデータドリブンな組織運営であるともいわれている。➡DX(デジタル トランスフォーメーション)参照
テキストマイニング(Text Mining)
ビッグデータ解析の対象となるデータは、数値などの形であらわされる比較的取扱いの簡単な「構造化・定量データ」と、数値に表すことのできない感覚的な側面を持つ、「非構造化・定性データ」に大別される。テキストデータは、「非構造化・定性データ」の代表的なもので、人工知能などの分析手法を駆使して自然言語処理(NLP natural language processing ナチュラル・ラングエッジ・プロセシング 言葉や文章といったコミュニケーションで使う話し言葉から、論文のような書き言葉までの自然言語を対象として、それらの言葉が持つ意味をさまざまな方法で解析する処理技術のこと。)を用いて文章を単語(名詞、動詞、形容詞等)に分割し、それらの出現頻度や相関関係を分析することで有益な情報を抽出するテキストデータ分析の方法がテキストマイニング(情報を採掘するの意)である。
ちなみにAI(人工知能)とデータマイニングは異なる概念であるが、混同されやすく、主に人間と同等の知能を実現させるための方法や取り組みがAIと呼ばれることが一般的で、テキストマイニングは、それ自体が何かを学んだり遂行したりすることは出来ない。➡AI(エーアイ アーティフィシャル・インテリジェンス Artificial Intelligence)参照
デジタルアイデンティティ(Digital Identity)
デジタルアイデンティティとは、人間などの主体(entity/subject)をコンピューターで処理するためのアイデンティティ情報であり、それぞれの属性情報から成っている。
一般に、多くのサービスの利用開始時には、メールアドレスに始まり、氏名、住所、電話番号等の情報が入力される。利用開始時の一連の手続きは、その実施者が実社会において存在する顧客本人であることを確認して、サービス上でデジタルアイデンティティを生成するためと、さらには当該利用者に対してデジタルアイデンティティの内容をもとに、適切なサービスを提供するために行われる。現実社会で「顧客本人であることの確認」は、例えば第三者がある個人になりすましてその個人の属性を登録したり、顧客本人だが実際に持っている属性とは異なる属性を登録したり、さらには実際に存在しない架空の人物として属性を登録したりしてくることへの対策である。
デジタルアイデンティティの場合、簡単な確認手段しては、メールアドレスという属性が入力された際に、サービス側からそのメールアドレス宛にURL付きのメールを送信し、そのURLにアクセスがされたら、デジタルアイデンティティの一属性としてメールアドレスを登録するものとなってくる。すなわち、デジタルアイデンティティとは、これらの属性の情報が電子化され、現実社会における「実体としての人」をデジタル社会における「データとしての人」として存在させるものである。
テストマーケティング(Test Marketing)
新しい商品やサービスに対する消費者の反応を確認するため、限られたエリア内で一定の期間試験的に提供することを指している。テストは常に新しい商品の本格的な生産や、新しいサービスの大規模な運用が開始される前に行われる。
テストマーケティングの目的は「需要の有無を正しく見極めること」である。商品開発の段階で「需要がある分野」と判断されてはいるものの、実際に消費者の反応を見るまでは不確実と言える。テストを実施することで、事前にターゲティングした通りの需要が本当に存在するのかを、確実に見極めることができる。例えば、若者を意図して企画した商品ではあっても、テストの結果、高齢者を中心に人気が見込めるということが分かった場合、マーケティング戦略の大幅な見直しが必要となる。テストマーケティングの今一つの目的は「リスクを回避する」という点にある。これにより、企業は大量の資金を投入してラインを準備するのが適切かどうかを、事前に見極めることができる。消費者のリアクションが良ければ、事前の計画通り進めていくことができる一方、消費者の反応が思わしくない場合には、いったん計画を見直して、プロジェクトの規模を縮小するべきか、あるいはプロジェクトそのものを継続するかどうかといった点を判断することになる。
テストマーケティングの方法としては、新商品が食品や化粧品などの場合、企業主催のイベント内で無料サンプルとして提供するケースもある。また、特定のエリア内にあるコンビニと提携して試験的に販売する例もある。エリアマーケティングとしては、静岡県が好適地としてよく取り上げられる。①年齢別人口構成比、経済数値や意識調査データなど全国市場に近い特性を持っている。②気候が温暖で気象条件による差異が少ない。③適度な市場規模を持っていること。テストがしやすく、市場規模に見合ったコストで展開できる。④媒体コストが首都圏や関西エリアと比べて安価。⑤マーケットとして独立したエリアである。などが挙げられる。
今日では、モニターを募集してオンラインでテストマーケティングを行う企業が増えている。特定の商品をモニターへ送付してインターネット上でアンケートを行ったり、新しいオンラインサービスを無料で提供してその使用感に関する意見を求めたりするものである。こうして、テストマーケティングの結果をフィードバックして、新商品が生産され、市場に出回ることになる。
電子署名
今まで紙の書類では印鑑やサインを用いて、その書類が正式なものであり改ざんをされていない原本であること証明をしていた。現在インターネットの普及やシステム化が進み、契約書や請求書といった重要書類を電子文書(PDFなど)に変えてやり取りする機会が増えてきている。
しかしPDFなどのデータが正確なものと、どのように証明できるのであろうか?そのPDFデータに押印がされていたとしても、PDFは容易に書き換えが行えるため、今までの印鑑やサインでは正確なものであるとは証明できない。そこで紙文書の印鑑やサインと同様に正式文書であることの証明を担うものが電子署名とタイムスタンプの付与である。電子署名には①本人証明と②非改ざん証明の2つの役割があるが、タイムスタンプは電子データによる契約書等に付与することで、付与時刻が記され、その役割は①存在証明と②非改ざん証明であり、電子データとして作成した契約書や請求書には、電子署名だけでなくタイムスタンプを付与し、かつ電子証明書が発行されてはじめて効力を発揮する
電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)は、2001年(平成13年)4月1日に施行された法令であるが、
パーソナルギフト(Personal Gift)
個人による コミュニケ―ションの手段としての贈り物をいい、いい夫婦の日、成人式、バレンタインデー、ひな祭り、ホワイトデー、就職、進・入学、卒業、端午の節句、父の日、母の日、敬老に日、孫の日、七五三、クリスマス、誕生日、結婚記念日などがある。
パブリシティ(Publicity)
もともとは「宣伝」や「世間に対して広く知ってもらうこと」と訳されるが、広報業界では「宣伝」よりも、「報道」を指して使われることが多く、企業や商品、サービスなどに関する事柄が、新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどのマスコミ媒体に、記事やニュースとして報道もしくは紹介されることをいう。
プレスリリースなどを通じてマスコミ媒体に情報を提供し、報道されるように働きかける広報活動である。企業が有料で行う広告と異なり、情報のコントロール主体は媒体側となるため、一般的に公正かつ平等なニュース記事として消費者に対しての信頼度は高くなる。
フォーマルギフト
一般に、お中元やお歳暮の季節の贈答品、新築、開業、栄転、当選祝い、仏事の返礼など、フォーマル色の強いものは「フォーマルギフト」とされている。これらを会社の名前で贈る場合には「ビジネスギフト」と呼ばれることもある。いずれも、熨斗紙や表書きなど、体系化した正式なしきたりに従って整えられる。ただし、近年では虚礼廃止や個人情報の取り扱いなどの観点から、フォーマルギフトの習慣が減少傾向にある。一方、フォーマルではないカジュアルギフト(パーソナルギフト)は、個人間のコミュニケーション手段の一つとして高まってきている。贈り方も自由で、個性的なラッピングが活かされる。なお、今日では、インターネット活用の贈り方もあり、「◯◯ギフト」の種類はさまざまで、厳密な線引きは難しいものと言える。
プッシュ(Push)戦略、プル(Pull)戦略
プル戦略とは、マスメディアやキャンペーンによって最終消費者に直接働きかける戦略で、「クイズ懸賞」「期間限定特別価格セール」などがそれに当たる。これに対して、マーケッターが卸売業者や小売店に、自社の商品を意欲的に販売するよう動機づけたり、販売に必要な援助を与えて販売する活動が「プッシュ戦略」である。この二つの活動は独立して行われるわけではなく、キャンペーンの際には連動して実施されている。例えば、新商品の導入期には、広告展開やキャンペーンによって広範囲の消費者に大きな関心を持たせるとともに、流通の各段階への働きかけを強化している。その連携の役目を果たすのが、メーカーや卸店の販売促進担当者といえる。ただし今や「プル戦略」は減少傾向にある。
ブランディング(Branding)
自社ブランドに対して顧客のロイヤリティや共感性を最大限に高めることで、独自の価値を創造し「競合他社との差別化を実現する」経営戦略のことである。
商品のデザインやシンボルマーク、ブランドロゴ、商標、名称、キャッチフレーズ、記号など、様々な要素を組み合わせてブランドを形作り、それを消費者に認知させ、市場におけるニーズをふまえて自社(製品、商品)の強み・ポジションを明確化する活動である。
消費者・取引先など自社の外側にいる人に向けて行う活動を「アウターブランディング」といい、従業員など自社の内側にいる人に向けて行う活動を「インナーブランディング」という。
プレミアム(Premium)とノベルティ(Novelty)
プレミアムは、一般には、賞品に付ける景品や賞品とされる。厳密には、割増金、手数料、権利金のこと。商品やサービスの購入を誘引するため、購買に付随して経済上の利益を提供する販売政策を、プレミアム政策と言い、プレミアムセール(景品付き販売)はその一例である。さらに、形容詞的に使って、例えば「プレミアムビール」のように「高級な」「上等な」の意味も持っている。
一方、ノベルティは、本来は「奇抜な」斬新な」という意味を持つ。ノベルティは企業や商品・サービスの認知度向上(広く知ってもらう)やイメージアップを図る目的で、無償で配られるアイテムのこと。必ずしも宣伝したい商品や企業と関わりがないグッズが多く、ボールペンやステッカー、ショッピングバッグなどに、企業のロゴやサービス名が印字されたものなどがある。ノベルティを配る対象は、商品やサービスの購入に限る場合と、参加者や来場者など全員に配られる場合がある。よく使う雑貨をノベルティにすることで、消費者にとっては使うたびにその企業のロゴを目にすることになり、じわじわと認知度や購入意欲を高めることが狙いと言える。また、大型の景品をプレミアム、小型の無料提供品をノベルティとする考え方もある。
ベネフィット(Benefit)
英語で「利益」「恩恵」「便益」などの意味であり、マーケティングにおいては、「顧客が商品から得られる恩恵(プラスの効果)」を指す。
メリットとよく混同されがちであるが、メリットは“商品やサービスそのもの利点・特長・強み”であるのに対して、ベネッフィットは“その商品の利点によって受けられる体験”である。消費者にとっては、それを利用することでどのような良い未来を得られるのかが重要であるため、POP広告においては メリットをそのまま伝えるのではなく、それがベネフィットを実現するためにどのように効果的なのかをしっかりと伝えたい。
ペルソナ(Persona)
ペルソナとは、直訳すると「人格」という意味。商品やサービスを利用する典型的な顧客モデルのことで、マーケティングにおける概念である。本来は心理学の用語で、スイスの心理学者カール・グスタフ・ユングが提唱した概念であり、もともと古典劇で役者が使用する「仮面」を意味するが、ユングは「人間の外的側面・自分の内面に潜む自分」をペルソナと定義している。
マーケティングの世界では、この「仮面の自分」という考え方を発展させて「架空のユーザー像・人物モデル」という意味で使われている。ターゲットとペルソナは混同されることが多いが、ペルソナはターゲット設定の一部であり、ターゲットよりも深く、詳細に人物像を設定していく。すなわち、ペルソナとは「自社の商品やサービスを購入してほしい顧客の特徴」をわかりやすくまとめたものと言える。商品開発やwebサービスについてビジネスを考える際に、姓名、年齢、性別、居住地、職業、役職、年収、家族構成、趣味、特技、価値観、ライフスタイルなど、実際に実在しているかのように、リアリティのある仮想の顧客プロフィールを作り上げる。このように細かく設定した顧客プロフィールがペルソナであり、具体的な顧客モデルを想定して戦略を明確化するためには、ペルソナの設定は有効である。
例えば、「ターゲット」は「中年女性、専業主婦、30代~40代」などと設定される。一方、「ペルソナ」は「姓名:山田花子、年齢:42歳、職業:専業主婦、住所:神奈川県横浜市、家族構成:高校教諭を務める夫と高校生の娘の3人家族。ライフスタイル:①娘の大学進学を視野に入れて、パートタイム勤務を考慮中、②通信教育でヨガのインストラクター養成講座を受講中、など。すなわち、ペルソナはターゲットからさらに踏み込んで、いっそう人物像を明確にしたものと言える。マーケティングにおいては、このようにリアリティのあるペルソナを設定することで、ペルソナの要求に応えるためのアイデアだけに集中してクオリティを高めることが出来、さらに、ペルソナを明確にすることで関係者間でのイメージの共有に役立ち、商品に関する方針や具体的なイメージを固め、効果的な集客や情報伝達につなげることが出来る。いわば、顧客のニーズを的確に把握するために、典型的な顧客モデルであるペルソナを設定することで、顧客像を明確化してマーケティングに活かすことができ、コストカットやタイムロスを防ぐことにもつながってくるものである。
ベンダー(Vendor)
ベンダーとは、売る人、売り手、売り主、販売者、販売店などの意味を持つ英単語。製品やサービスを利用者に販売する事業者のことを意味する。IT分野では販売する製品の種類などを冠して「ハードウェアベンダー」「OSベンダー」「システムベンダー」のように「○○ベンダー」という造語を形成することが多い。すなわち、製品やサービスを、買い手・利用者に対して直に販売する事業者などを指すが、自らがその製品を開発・製造しているとは限らない。開発元や製造元が別にいる場合はこれを「メーカー」(Maker)と呼び、また、買い手・利用者のことは「ユーザー」(User)「カスタマー」(Customer)「クライアント」(Client)などと呼ぶ。
さらに、企業や官庁などから委託を受けて、情報システムをオーダーメイドで開発・構築して販売する事業者を「システムインテグレーター(System Integrator)」、略して「エスアイヤー(SIer)」と呼ぶが、インテグレーター(物流業者)から見てシステムの構成要素(機器や既製ソフトウェアなど)の供給元のことをベンダーと呼ぶことにもなる。ある特定の企業の製品(コンピューター本体や周辺機器、オペレーティングシステム、ミドルウェア、開発ツールなど)だけでシステムを構築することを「シングルベンダー」、複数の企業の製品を組み合わせて構築することを「マルチベンダー」とも言っている。一方で、情報システムの発注者・利用者の側(ユーザー企業)からは、インテグレーターのことをシステム全体の売り主として「ITベンダー」「システムベンダー」「開発ベンダー」などと呼ぶことがある。このように、ベンダーという用語は、利用する立場によって、さまざまに解釈され使用されている。
ポイントカード(Point Card)
一般に、小売店が購入客に発行するカードで、買い物をした金額をポイントに換算してカードにためておき、次回以降の買い物でそのポイント分の金額を値引きする、などのサービスを提供する仕組みとなっている。実際に「ポイントカード」を発行している小売店は多い。
ポイントカードは、主に「共通ポイントカード」と「自社ポイントカード」に大別される。「共通ポイントカード」とは、特定の店舗だけでなく、企業や業種を問わず、自由に利用できるポイントを指す。顧客側としてはカードの発行手続きが1回で済み、多数のカードを持ち歩かずに済むのがメリットで、活用範囲が広く、効率よくポイントが貯まるのも魅力と言える。よく知られる共通ポイントしては、「Tポイント」「楽天ポイント」「Pontaポイント」「dポイント」などがあり、Tポイントには、「吉野家」「ウエルシア」、dポイントには「マクドナルド」「マツモトキヨシ」など、それぞれに大手チェーン店の参入が見られ、大きな経済圏を築いている。「自社ポイントカード」は、同一グループや特定の店舗のみで使うポイントカードのことで、「ハウスポイント」とも呼ばれる。会員数が少ないことから、共通ポイントカードに比べると、マーケティングに必要な顧客のデータが多く収集できない点がネックと言える。今日では、これらの共通ポイントカードに続く形で、さまざまな大手自社グループが「グループ内のポイントを共通化」する動きもみられ、まさに、ポイントカードの戦国時代の到来の状況にある。また、 共通ポイントの競争が激化する中、Yahoo!ポイントが「Pay Pay」に、au WALLETポイントが「Pontaポイント」に統合するなど「共通ポイントの統合化」も進んでいる。
さらに、ポイントカードの「アプリ化」も顕著である。アプリ内でポイントカード番号を登録しておけば、ポイントカードを使わなくてもポイントが積算される仕組みで、 レジでスマホのアプリを提示することで、ポイント情報が読み取れる。企業がアプリカードを導入する理由には、「Push通知で広告が送れること」も挙げられる。キャンペーンやタイムセールの告知を、タイムリーに通知できれば、顧客の購買行動につなげることが出来る。多くのポイントカードでは、購入金額の1%前後がポイントとして還元されるが、キャンペーンでは通常の5倍、10倍などの還元も設定している。
店舗が「共通ポイント事業」に加盟するには、加盟店が「導入費用」及び「ポイント原資」を負担する仕組みとなり、ポイントを顧客に付与した場合、店舗では「IFRS(国際会計基準)において、「売上金-ポイント付与分」として財務処理され、ポイントが利用された段階で初めて売上にカウントされる。 この方法は「売上繰り延べ処理」と呼ばれるが、名前の通り、売上の計上が将来に先送りされることを意味している。すなわち、店舗が顧客にポイントを付与した時点では、売上が一時減少したように見えるが、店舗側からすればポイントは「消費者が将来使ってくれるお金」「儲けにつながる可能性があるお金」として認識されることになる。例えば、Yahoo!ショッピングでは、顧客が商品を購入する「Pay Payボーナス」などが付与される。 加盟店では1%の「ストアポイント原資」と1.5%の「キャンペーン原資」などを、毎月負担する仕組みである。楽天では、月々の「システムサービス利用料」として、1%の「ポイント原資」を加盟店から徴収していている。 共通ポイント事業者では、顧客が実際にポイントを使用した時点で、ポイントを現金に換算し、店舗にキャッシュバックしていている。
いずれにせよ、ポイント還元は、消費者にとっては多くの利益をもたらすが、店舗の負担金は少なくない。では、何故、ポイントカードを導入するのか。一つは、当然、情報が得られることのメリットが大きいためである。ポイントカードを導入すると、来店した顧客の「個人情報」が得られる。名前・年齢・性別・職業などの基本情報のほかに、来店日時や購買履歴、接客したスタッフなども検索が可能である。 共通ポイントの場合は、加盟企業同士で顧客情報の共有が行われるため、よりたくさんの情報が収集できる。集まった顧客情報をデータ化すれば、顧客の属性・購買傾向などがわかり、今後のマーケティングに生かすことが出来る。すなわち、顧客の購買履歴を把握していることで、確実に該当者に通知ができる。顧客の心を動かし、購買行動を促す「仕掛けづくり」に活かせる。 来店頻度・購買履歴・客単価などを細かく分析すれば、ターゲット層に適したサービスが打ち出せる。
商品開発にデータを活用すれば、より顧客のニーズに合ったものが生み出せる。結果的に再来店率が上がり、売上の増収へとつながる。 また、小売店においてはこれまでの購買傾向から「今後の販売数量」の予測ができ、仕入れの計画にも役立ってくる。さらに、顧客に対してお得なキャンペーンが打ち出しやすくなる。ひと昔前までは、顧客の住所にDMを郵送したり、メールを送信したりするのが一般的であったが、レシートに情報を記載したり、アプリのプッシュ通知でキャンペーン情報を配信することが可能である。
消費者は、少しでもリーズナブルに買い物をしたいと望んでいる。「3%還元」「ポイント10倍」などのキャンペーンが開催されれば、購買欲が刺激される。実際のところ、店舗自体の「10%割引」よりも、「ポイント10倍還元の方に惹かれる消費者は少なくない。とりわけ、購買単価が高いかつポイント還元率も高い場合、顧客は「ポイントの価値」を強く意識して、購買に踏み切る傾向があり、それがポイントカードの強みと言える。
マーケットセグメンテーション( Market Segmentation)
日本語でマーケットは「市場」を、セグメンテーションは「分割や区分」を意味し、マーケットセグメンテーションは「市場の細分化」を指している。
マーケットセグメンテーションが課題となる以前は、万人向けを期待できる商品に注力するマスマーケティングが主流であった。しかし、今日では、顧客のニーズや価値観の複雑化、多様化が進んでおり、大量生産して市場に大量投入するビジネスで、顧客の要求に広く応えるのは難しくなっている。そのため、細かな単位ごとにアプローチできる手法として、同質のニーズを保有すると考えられる特定のセグメントを絞り、商品やサービスを提供するターゲットとして限定的に捉えたマーケティングが必要となってきた。具体的には、顧客の年齢や性別といった属性や、趣味・嗜好、行動パターンなどのパーソナルデータなどで分類し、企業が市場を絞り込むことがそれにあたる。そうすることにより、市場規模、自社の強み、製品特性などを考慮した自社に最も魅力的なセグメントを標的市場として、的確な戦略を組み、効率的なマーケティング活動が推進できる。
マーケットセグメンテーションは、「ターゲット・マーケティング」とも呼ばれている。また、細分化した消費者集団のことをマーケットセグメント (Market Segment) と言い、製品を売り込もうと狙いを定めたマーケットセグメントのことをターゲットセグメント (Target Segment)またはターゲット市場 (Target Market)と言うことがある。
マーケティング(Marketing)
企業の経営活動のための技術的手段の一つをいい、販売やサービスを促進するためのすべての活動のことである。市場調査、商品化計画、販売促進、広告宣伝、販売、物的流通などがあり、マーチャンダイジングと両輪で活動が行われる。
マーケティングの概念は時代と共に変貌しているが、(社)日本マーケティング協会は「マーケティングとは、企業及び他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」と定義している。
マーケティング戦略(Marketing Strategy)
目標の明確化、計画策定とその実行のことで、分析・立案・展開の3段階を経る。マーケティング戦略には、企業戦略、製品ライン・ブランド別戦略、マーケティング別要素(マーケティング ミックス)戦略などがある。
マーケティング ミックス(Marketing Mix)
マーケティング目標を効果的に達成するための戦略手法の組み合わせをいう。
例えば、企業が立案したマーケティング戦略を、商品企画や広告宣伝、営業活動などの実際の行動(マーチャンダイジング)にスムーズに落とし込むためには、いくつかのフレームワークを組み合わせて使う。そのフレームワークの代表的な例が『4P』で、マーケティングミックスと呼ばれる考え方を言う。
4Pとは、4Pの理論ともいい、①製品(Product:商品・サービス開発やブランディング(顧客にとっての価値観))、②価格(Price:価格、支払方法など(顧客にとってのコスト))、③プロモーション(Promotion:販促)、④流通(Place:チャネル)の頭文字を取った言葉である。
マーケティングインテリジェンス(Marketing Intelligence)
市場(顧客および見込み客)を理解するための、情報の収集と分析のプロセス。つまり、市場のニーズや嗜好の変化、動向を測定し、将来の市場規模やその特徴に影響をおよぼしそうな、ビジネス環境の変化を評価すること。いわば「現在と将来予測のための戦略情報の評価」といったコンセプトである。
言葉の響きで、いかにも最近のマーケティング用語のように思われがちだが、すでに1970年代に見られる言葉である。日本語の「情報」にあたる英語は、データ(Data)、インフォメーション(Information)、インテリジェンス(Intelligence)の三つがあるが、データ➡インフォメーション➡インテリジェンスといった言葉の流れで、重要性を再認識する意味での新感覚の用語として使われ、注目されているものと言える。
マーケティングリサーチ(Marketing Research)
「マーケティングリサーチ」とは企業が新しい商品の開発やマーケティングを行うに際して、ユーザーから必要な情報を集めるために行う調査のことを指す言葉である。その段階としては、まず消費者が何を考えて商品選択や購買行動を起こすのか、直接的に調査を行うことで、より具体的な仮説に基づいたマーケティング施策を検討し、実施しやすくすることを目的としている。すなわち、ターゲットとなる消費者やそのニーズを把握することで、より確実なマーケットへのアプローチが可能となり、有効なマーケティング施策へ結びつけることが可能となるわけである。
そのために、必要な情報定義を行い、予算に基づいてデータを収集し分析するといった手順を踏んで行われる。実際には、商品選択や購買動機など消費者の視点からさまざまな手法を用いて調査を行うが、その一般的な調査法を挙げてみよう。
企業が売りたいと考える商品が必ずしも売れるわけではないのは、ターゲットやニーズが曖昧で、効果的なマーケティング施策が打てていないことが原因とされる。このような場合に活用できるのが「マーケティングリサーチ」である。
マーチャンダイジング(Merchandising)
商品政策、商品化計画のことをいい、一般的にはマーケティングの中に含まれる概念と捉えられている。
メーカーでは、製品計画、製品開発、製品管理のことをいい、小売店や問屋では、商品の取り揃えや仕入れ活動のことを指す。消費者動向・商品動向・競合他社動向を把握し、適品・適時・適量・適所・適価で揃えることが理想である。
まちゼミ
「得する街のゼミナール」、略して「まちゼミ」とされている。商店街の店主が講師となって、専門店ならではの専門知識や情報、コツを、地域消費者に無料で教える少人数性ゼミ。2013年に岡崎市の商店街が実施し、今や全国の商店街に普及して、全国一斉まちゼミが開催されている。商店の存在・特徴を知ってもらうと共に、店主やスタッフと顧客のコミュミケーションの場から、信頼関係を築くことを目的とする事業である。
効果としては、消費者にとって、①無料で知識が得られる・普段悩んでいたことを解決できる、②得た知識で普段の買い物力の向上、③新しいお店の開拓、信頼できるお店が見つかる、新しい仲間との出会い、などがある。商店にとっては、①自店を知ってもらうチャンス、結果新しいお客様につながる、②自店の専門性や特色をアピール、その分野についての専門性が向上する、③商品について知ってもらうことで、お客様にその分野に関心を持ってもらえる、④ライフスタイルの提案、⑤顧客様の声を直接聞くことができる普段から相談に行ける間柄になれる(信頼関係づくり)など。
街にとっては、①このエリアにあるたくさんの店舗が紹介でき、買い回りにつながる、②店舗同士の繋がりが強くなる、③市街地エリア全体のイメージアップにつながる。④安心・信頼できる街をPR、行きたくなる街になる、などの成果がある。各地の商店街では、従来から、一か所に集まってバザールなどを開催した際に、例えば金物店が「包丁の研が方」、鮮魚店が「魚の捌き方」、陶器店が「クリスマスのテーブルセッティング」などを、商店主が講習していた例がある。今やそれがマニュアル化され、系統立てて実施されているものと言える。
マズローの欲求の5段階説
心理学者アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階に理論化したものであり、マーケティングの基礎とも言われている。人間には5段階の「欲求」があり、1つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする基本的な心理的行動を表す。
下層の【第1段階/生理的欲求】から上に向かってピラミッド状の序列になっており、1段目の欲求が満たされれば2段目の欲求を満たそうとする。
「第1段階/生理的欲求」… 生きていくために必要な、基本的・本能的な欲求
「第2段階/安全欲求」… 心身ともに健康でかつ経済的にも安定した暮らしをしたい欲求
「第3段階/社会的欲求」… 人や家庭、会社から受け入れられたい欲求
「第4段階/承認欲求(尊重欲求)」… 他者から尊敬されたい、認められたいと願う欲求
「第5段階/自己実現欲求」… 自分の世界観・人生観に基づいて、『あるべき自分』になりたいと願う欲求
マネキン販売
「マネキン」は、フランス語で「モデル」を指すMannequin(マヌカン)の英語読みに由来する。マネキンとは商品の説明員兼販売員であり、マネキン販売は、マネキンが店頭・店内において、商品を知ってもらうことを目的として商品説明を行ないながら販売することである。
化粧品店の美容部員、服飾・雑貨店の販売スタッフ(ファッションアドバイザー)、スーパーマーケットやデパ地下などで試食販売や実演販売を行う販売員などが例である。
マルチクラウド(Multi Cloud)
複数のクラウドベンダーが提供するクラウドサービスを組み合わせて、自社の要求を満たす最適な環境を実現する運用形態のことである。主に以下に代表されるパブリッククラウドの組み合わせで構成される場合が多い。
・Amazon Web Services(AWS=Amazonが提供するクラウドサービス)
・Microsoft Azure(Azure=Microsoftが提供するクラウドサービス)
・Google Cloud Platform(GCP=Googleが提供するクラウドサービス )
上記に加えて、SaaSが活用される場合もある。自社でシステムを持たなくても、必要なサービスを速やかに使い始めることが可能。「クラウドファースト」を目指す企業に適した方法である。マルチクラウドが求められる理由とメリットとしては、以下のものが挙げられる。
クラウドは実装モデルによって「パブリック」「プライベート」「ハイブリッド」に分類されるが、これは、クラウド環境をどう実現しているかで分類したものであり、マルチクラウドとはやや次元が異なる言葉である。マルチクラウドでは、これら実装モデルやサービスモデルで分類される複数の仕組を組み合わせて使用する。それぞれの良いところを組み合わせ、自社独自の運用形態を構築するのがマルチクラウドの考え方である。
無店舗販売
小売業の販売形態の一つで、店舗を持たずに商品を販売する販売方法。訪問販売、通信販売、テレホン・ショッピング、自動販売機による販売、産地直送、移動販売などがある。在庫が必要なく固定費がかからないことがメリットであるが、反面、競合が多く、リアル店舗に比べれば、顧客からの信用度が低くなることがデメリットであると言える。
モニター調査
モニター調査とは、ある程度の期間を定めて、商品やサービスの意見を求める調査を言う。モニターとは意見を述べる対象者(ユーザーや専門家などさまざま)で、目的によってモニターを選択することになる。モニター調査は、対象者から率直な感想・意見を得ることが出来るため、調査で得られた情報を分析することにより、さらに消費者の満足度の高い商品の開発・改善に役立てることが出来る。
調査では、まず目的を明確にし、どのような対象者に調査を実施するかが肝心である。例えば職業・年齢・性別・住所・収入など、条件を決めて絞り込むが、目的に応じて対象者の条件は変わってくることになる。
モニター調査には、いくつか実施方法がある。その一つに、インタビューが挙げられる。これは対象者に対し、調査項目に関してヒアリングを行うものである。例えば特定商品に関する調査の場合、どのような点が好まれるか、どのような点が不満かを、把握できるような調査項目を設定することにより、顧客の率直の評価・意見を把握することができる。これらの情報は商品開発において大いに役に立ってくる。
また、アンケートもよく用いられる方法となっている。インタビューと同じように調査項目を設定して、それらについて回答してもらうのである。選択式の場合、回答結果を集計することにより、定量的に情報を分析することができるようになり、回答の傾向(回答者の傾向)を客観的に把握することができる。さらに、グループインタビューの方法がある。これはグループで特定のテーマ(商品やサービス)について意見を交わすものであり、インタビューと同様、対象者の生の声を把握できる点にメリットがある。グループ形式になることによって、議論が活発化し、より深い内容の情報を収集できる。
モニター調査は多くの企業が実施しており、きわめて有効なマーケティングリサーチの手法といえる。小売業では、百貨店、スーパーマーケット、SC、商店街でもモニター制度を取り入れていて、例えばスーパーでも約20人の顧客モニターを依頼し、電話で意見を聞いたり、グループインタビューで意向を把握して、品揃えや販売促進策に約立てている例がある。モニターには商品券などを謝礼とし、2年ほどでメンバーを交替して、常に新しい情報を吸収しているものである。
薬機法(旧薬事法)
「薬機法」とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(厚生労働省)の略称で、以前は「薬事法」と呼ばれていた法律が、2014年11月の改正によって名称を変えた法律である。その目的は、具体的には医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具などについて製造・販売・安全対策まで規制し、その適正化をはかることを目的としている。
医薬品や医療機器等、この法律で規制の対象となっているものは、人の健康や生死に密接に関わっている。国で認められていない成分が入っていたり、または販売会社の誇大広告で効果・効能を消費者が誤認し使用してしまった場合、人体に影響がでる可能性が出てくる。そういった事を事前に防ぎ、消費者の安全を守るために、「薬機法」というルールが存在していることになる。ただし、健康食品・サプリメント、健康・美容器具などはこの5つに該当しないため、直接的な法律による制限は受けないが、医療品のような効果を訴求するなど、薬機法に抵触する表現は禁じられている。
広告に関連する立場から見れば、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、健康食品など、ドラッグストア・薬店で取り扱う商品については、この「薬機法)」に基づき、広告が虚偽・誇大にならないよう適性を図るために、厚生労働省医薬食品局から各都道府県知事に通達した「医薬品等適正広告基準」の中の「医薬品医療機器品等法に関わる不適表示・広告事例集」が参考になる。その一例を挙げてみると、医薬品のパンフレットなどに「だるい、カルシウム不足、肩こり、腰痛のある人、血圧が心配な人に」などは使えない。承認されている表現は「滋養強壮」「虚弱体質」などである。
医薬部外品では、DMなどに「白髪を防ぐエキス発見、黒髪が白髪になるのを予防します」は不適格。白髪予防の効果は認められていないためだ。化粧品では、雑誌広告に「肌のリフト力に弾みを付けます」「お肌のシミ、くすみなどに有効」などは不適格。化粧品に対して認められている効能効果の範囲を超えているため。POP広告に「敏感肌の方など、赤ちゃんからお年寄りまで安心してお使いいただけます」は不適格。安全性を保証する表現はできないため。医療機器では雑誌広告などに「痛みの緩和、万病の予防をします。危険性はありません」は不適格。承認された効果効能を逸脱していることと、安全性に関わる保証表現は使用できないためである。
健康食品では、インターネット広告などに「内臓脂肪を燃やす」「血液をサラサラにする効果があります」は不適格。身体の組織機能の強化、促進を目的とした表現は、医薬品的な効果効能に該当するため広告できないため、などなど。医療・医薬品関連のPOP広告やパンフレットを作成する際には、よく注意して、法律に触れない文案作成を図ることが肝心である。
ユニバーサルデザイン(Universal Design)
「ユニバーサル」とは「普遍的な」「すべてに共通の」という意味で、「ユニバーサルデザイン」を日本語に言い変えれば「すべての人のためのデザイン」「みんなが公平に利用できるやさしいデザイン」という意味になり、その頭文字をとって「UD」として表現される。本来は設計デザインから出発した言葉だが、今や形あるものだけを指しているのではない。世の中には、子どもから成人、高齢者、男性・女性、外国人、車いすを利用する人、視覚障がいの人、聴覚障がいの人、外観では分かりにくい障がいの人、妊産婦、ベビーカーを押す人など、さまざまな人が暮らしている。ユニバーサルデザインは、こうした年齢、性別、文化、身体の状況など、人々が持つさまざまな個性や違いにかかわらず、最初から誰もが利用しやすく、暮らしやすい社会となるよう、街や建物、道具、仕組み、サービスなどを提供していこうとする考え方のことである。
もともとはアメリカの大学で建築などの研究者のロナルド・メイス教授が1980年代に提唱した思想。(教授は幼い頃の病気がもとで、電動車いすを使って生活をしていたという。)すべての人を対象としている「ユニバーサルデザイン」に対して、高齢者向けのデザインなど、特定の条件に向けたアプローチは「バリアフリー」や「アクセシビリティ」などと呼ばれている。
ライブコマース(live Commerce)
文字通り「ライブ動画」と「Eコマース(ネットショップ)」を組み合わせた販売手法をいい、SNSなどでライブ動画を配信して商品を販売することである。視聴者はチャットなどでリアルタイムに質問やコメントが可能なため、写真や文章だけでは伝えにくい商品の魅力を訴求でき、ネットショッピングでありながら実店舗で買い物をするような双方向のコミュニケーションがある点が特長である。食品、化粧品、コスメ、ブティックなどでの利用が多くみられるが、インフルエンサーの影響力も高いといわれている。動画などのライブ配信を通じて商品を紹介し、購入を促す。リアルタイムに顧客と交流できるのが利点だ。視聴者である顧客は、商品について企業側に直接、質問したり、細部を見せてもらったりして、購入ができる。
ライフサイクル(Life Cycle)
プロダクト(製品)のライフサイクルは、製品が発売されてから販売終了に至る過程のことで、「導入期(市場開発期)・成長期・成熟期・衰退期」と4つに分類し、それぞれの段階における戦略の変化を示唆している。その過程における売上高、利益の変化に合わせてマーケティング戦略も変化させることが成功のポイントである。消費者のニーズの移り変わりの速さや生活様式の多様化、生活意識、価値観などによりライフサイクルの速度は、一般的に短くなる傾向にある。
リードタイム(Lead Time)
本来は生産や開発、物流などの現場で使われていた用語で、顧客が発注してから納品が完了するまでの時間を「顧客リードタイム」や「納品リードタイム」という言い方もし、各工程においても、「開発着手から完了までを開発リードタイム」、「部品や材料の発注から納品までを調達リードタイ」、「製造開始から出荷可能になるまでを生産リードタイム」、「工場や倉庫から店舗や顧客までを配送リードタイム」などのようにも呼ぶ。
受注生産方式の場合は顧客の発注を受けて製造を開始するため各工程の合計が全体のリードタイムとなるが、大量生産される製品の場合は事前に生産しておき倉庫から完成品を発送して納品することができるため、顧客リードタイムは在庫の手配と配送にかかる時間が基本となる。
広義におけるリードタイムとは「各工程のはじまりから終わりまでの所要期間」を意味するが、後に「注文から納品までの総時間」の意味で他業界でも使われるようになり、リードタイムの長さは、業種や作業によって対象となる工程概念が異なるため、場面に応じた使い方や解釈をすることが重要となる。ちなみに、リードタイムは「納期」の意味で使われることもあるが、正確にはこの2つの言葉は異なる。「納期」とは、英語で「デリバリー デイトDelivery Date」と表現される。
リテールサポート(Retail Support)
「リテールサポート」とは、BtoB事業における顧客支援を総称した用語である。つまり、卸売業者やメーカーが、小売業者などの取引先に対して、経営的な支援活動を行うことを言う。小売店の業績を向上させることで、結果として自社の業績向上につなげるのが目的であり、特に卸売業者にとって、リテールサポートの実施を通じて小売業者と密接な関係を築くことは、自身の生き残りにとってもきわめて重要な課題と言える。
リテールサポート内容としては、
1.日常営業活動における実践として、「商品、競合、価格、消費者、キャンペーン等に関する情報提供」「品揃え提案」「販促ツール提供」等
2.節目における提案営業として、「商圏調査によるマーチャンダイジング提案」「棚割り提案」「オペレーションコスト削減提案」「従業員教育」等
3.組織的に取り組む提案・改善活動として「専門スタッフ育成、装置化」「棚割りシステム提案」「物流・情報システム共有化」「店会の組織化」等、などがある。
すなわち、財務や税務のアドバイスから、POSシステムの提供やPOSデータ分析、棚割提案、マーチャンダイジング、売り場レイアウト作り、営業携帯端末を用いた情報提供など、得意先を支援する活動である。
一方、ディーラーヘルプスという言葉も、同様な意味で使われるが、その主たる目的は、自社商品や自社取扱商品の販売促進と言える。それに対して、リテールサポートはあくまでも小売業者の繁栄を支援することによって、結果として自社商品や自社取扱商品の販売増加を目指すもので、近年は「ディーラーヘルプス」に代わって「リテールサポート」の用語が使われる頻度が高い。
リピート販売
同一商品を何度も買ってもらうことであり、主に通販サイトの販売手法である。
「リピート通販」とは、特定の商品を毎週・毎月など、一定の周期で購入し自宅に届けるサービスのことである。ユーザーが必ず毎週・毎月購入するという商品は、リピート通販に最適な商品と言え、健康食品、食品や水、化粧品(コスメ)、シャンプーなど、毎日使う消費財があげられる。
なお、一種類の商品、あるいはごく一部の商品をリピート購入してもらう前提で通信販売するビジネスモデルを「単品リピート通販」と呼ぶ。
六次産業化
農林水産物を収穫・漁獲(第一次産業)するだけでなく、加工(第二次産業)し、流通・販売(第三次産業)まで手がけることで、農林水産業の経営体質強化を目ざす経営手法。農業経済学者で東京大学の今村奈良臣名誉教授が、1990年代なかばに提唱した概念で、第一次産業の「1」に第二次産業の「2」と第三次産業の「3」を足して「6」になることから名づけた造語である。
農林水産業者の六次産業化によって、、従来、第二次・三次産業事業者に回っていた加工賃や流通マージンなどを農林水産業者自身が獲得し、付加価値を向上させるねらいがある。農林水産物のブランド化、地域特産品の開発、消費者への直販などの手法がとられることが多く、販路拡大や農山漁村活性化と関連づけて論じられることが多い。
ワークショップ (Workshop)
英語では「仕事場」「作業場」の意味。講師の話を参加者が一方的に聞くのではなく、参加者自身が討論に加わったり体を使って体験したりするなど、参加体験型のグループ学習で、学びや創造、問題解決やトレーニングの手法である。「ファシリテーター」と呼ばれる司会進行役を中心に、参加者全員が体験するものとして運営される形態がポピュラーとなっており、学校教育、企業研修、ビジネス、芸術・身体表現(ダンス・演劇など)、ものづくり講座、住民参加の街づくりなど、様々な領域で行われている。